慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

4月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、4月21日(日)10時より行います。テーマは「法然上人がひらいた『浄土門』とは何か。Part 3 」です。法然上人の弟子、弁長、親鸞、証空が、師の教えをどのように受け止めていたのかをご一緒に学びましょう。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

長崎の原爆忌と「むしょう参り」の続報

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 昨日(8月9日)は、長崎に原爆が落とされた、もう一つの原爆忌でした。今朝の中日新聞によると、アメリカ軍は実は三発目の原爆も用意していたということです。

 私は原爆の開発をしていたニューメキシコ州の施設跡を父と訪れたことがあります。父は黙ったまま、ゆっくりと展示を見ていたました。感想を聞けるような雰囲気ではありませんでした。アメリカへの怒りというより、戦争そのものへの深い哀しみが父の体全体から零れ落ちているような気がしました。

 御供養のための読経をしていたら、汗がたくさん出てきました。1945年の8月9日も、どんなに暑かったことでしょう。

 「むしょう参り」の続報

 桶狭間の周辺では、毎年、8月6日にお墓にお参りし、いつもより丁寧に掃除をして、墓前に西瓜を供える慣習があります。これを「むしょう参り」と呼んでいます。私は東京育ちで、この慣習について慈雲寺に赴任するまで全くしりませんでした。

 しかし、とても興味深い習わしなので、いろいろな人に聞いてみました。先日、ご近所のお寺のお施餓鬼のお手伝いに行ったのですが、その時に会った先輩の僧侶から、いろいろ教えていただきました。

 その先輩によれば、「むしょ」は「墓所」がなまったものだろうとのことです。名古屋市のお隣にある大府市周辺では、お墓のことを「もしょ」と呼ぶことがあるそうです。本家の大きなおはかは「おおもしょ」、小さなお墓のことは「こもしょ」というのだそうです。

 墓所(ぼしょ)が「もしょ」になり、それが「むしょ」になったのでは・・・たしかに、このような音の変化なら十分ありえるでしょう。

 この問題、もう少し追及してみたいと思います。もし、何か御存じの方があれば、コメントでご教授いただければ幸いです。

◎今日の写真は、カナダのブリティッシュコロンビア州にあるサーモン氷河です。自動車で近くまで行かれる氷河としては最も迫力のある氷河の一つです。

極楽の余り風・・・気持ち良過ぎて不眠

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 一昨日の夜から昨日にかけて、桶狭間はたっぷり雨が降りました。本当に久しぶりだったので、境内の木々が一斉に「嬉しい!」と叫んでいるような気がするほどでした。あれだけ降れば、地面の奥の方の根にもたっぷり水が行き渡ったことでしょう。

 そのせいか、昨夜はとても気持ちの良い、涼やかな風が寝室に吹き込んできました。寝室にはエアコンがないので、少し離れたところから扇風機をかけ続けます。先月からの連日の熱帯夜で、扇風機ではどうしようもないレベル。エアコンを購入する予算は無し・・・と、毎晩半べそでした。とうとう「心頭滅却すれば火もまた涼し」とはいかず、Amazonで冷風機なるものを購入しました。扇風機の一種ですが、水を入れるところがあり、風が水を通ってから吹いてくるシステム。水に氷や凍った保冷剤を入れれば、風がさらに心地よく・・・期待が大きかったせいか、思ったほどには心地良くはないのですが、扇風機よりだいぶまし。

 おかげで、泣かずに眠ることができます。

 しかし、昨夜はその冷風機を点けなくても、窓からすばらしい涼風が入ってきました!部屋の南北にある小さな窓を開けているだけなのに、なんと心地良い・・・『阿弥陀経』によれば、極楽には常に涼やかで心地良い風が吹いているそうです。まさに、そんな風!

 「極楽の余り風」という言葉を始めて聞いたのは落語かな?極楽からこぼれて来たような心地良い風という意味でしょう。昨夜の風は、正にそんな心地。

 気持ちの良いまま眠りに入れると思ったのですが・・・そうではなかった!あんまり心地良過ぎて、本を少し読んではウトウト・・・目が覚めてはまた本を読んで「気持ちいいなぁ・・・」と思いながらウトウト・・・結局、ろくに眠れませんでした。

 不思議・・・

◎今日の写真は、カナダのブリティッシュコロンビア州北部で見た、ベア氷河です。

原爆忌と「むしょう参り」

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 今日は、人類史上最も残忍な行為である原爆が広島に投下された日です。今朝の中日新聞の一面には、当時多くの被爆者が運び込まれたとされる似島で、土中に放置されたままの被爆者遺骨の発掘を続けている広島大学の研究院についての記事が出ていました。

 原爆を直接体験した人は年々少なくなっている今、私たちはそれを語り継ぎ、二度と同じようなことが起きないように地道な活動を続けていくべきでしょう。

 原爆について、私は一度だけ父と話したことがあります。父は広島県の出身ですが、父の生まれた町は広島市からは遠く離れた山の中です。父は戦後長い間、抑留生活を送っていたのですが、ようやく故郷へ帰ってこられたとき、町のあるところに、「異様な」人々が集まって住んでいるのに気が付きました。

 「原爆の被災者だったんだ・・・ケロイドの目立つ人もいた。町の住民は気持ち悪がってね。病気がうつるみたいに言う人までいたよ。原爆についての知識も十分じゃなかったんだろうね。」

 戦争の記憶から逃れたがっていた父もまた、被爆者を避けていたと哀しそうな顔でした。被爆者の姿は、悲惨なかたちで戦争を思い出させたからだそうです。父は自分のした無慈悲な態度を深く悔いていたようです。

 今朝は、被爆者の御供養をさせていただきながら、父のことを思っていました。

 また、今日は「むしょう参り」の日でした。

私は東京生まれで、大学を出てから、4年前に名古屋に赴任するまで、ずっとカナダで暮らしていてので、名古屋周辺のさまざまな慣習をほとんど知りません。

 慈雲寺は名古屋市内に位置していますが、伝統的な行事がまだ少し残っています。「むしょう参り」もその一つ。師僧から、この慣習について教えていただいてなかったので、住職になって初めての8月6日にはビックリしました。夜が明けきらないうちから、墓地にたくさんの人がお参りにおいでになり、熱心にお墓を磨いて、さらには西瓜をお墓の前で食べる!

 いったい何事がおきているのかわからず、ご近所の花屋さんにコッソリ聞いたほどです。すると花屋さんは「むしょう参り」というものだと教えてくださいました。

 「むしょう」って何でしょう?漢字ではどうかくの?

 いろい「ろ調べてみても、資料がほとんど出て来ません。「無聖参り」という説や「無精参り」という説・・・でも、基本はお墓を掃除する日。お墓をきれいにして、お盆を迎える準備・・・う~ん・・・少ない文献を漁ってみると、奥三河の葬礼に関する論文に「むしょう参り」への言及がありました。しかし、これはお正月前。お正月を迎えるためにお墓をきれいにする慣習を「むしょう参り」というようです。

 名古屋では、緑区桶狭間周辺や笠寺周辺ではまだこの慣習が残っているようです。浜松でも行うというブログの記事も見つけました。

 滋賀県には「虫生神社」という神社があります。どうやら養蚕と関係がある神様らしい。養蚕はこれからが忙しくなるとき。「むしょう」もひょっとしたら関係あるかな?

 私は「無精霊」なのではと推測しています。小さな子供や水子など、さまざまな事情で戒名もなく亡くなった人の供養をする日なのでは?

 いずれにしても興味はつきません。

「むしょう参り」について、御存じの方は、ぜひコメントでご教示くださいませ。

◎今日の写真は、世界遺産になった原爆ドームです。

 

水道からお湯が出ました。暑くても、僧侶が走る8月

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 水道の蛇口からお湯が出てきました!もちろん、湯沸かし器から来たお湯ではありません。水道管が温められて、お湯になっていたんですね。

 お風呂場と台所の洗い場にはボイラーからお湯が回ってきますが、それ以外の場所の蛇口はお水だけ。寒い時には、「カナダだったら、家中の蛇口からお湯がでるのに・・・」とつい愚痴が出てしまうのですが、夏にお湯が出てくるのは気持ちが悪いなぁ・・・なんて、友人の僧侶にこぼしたら、彼はニコニコ笑って、「慈雲寺さんの悩みは水道だけか・・・ま、ありがたいことだね。」と言いました。

 確かに・・・その友人は、今月は朝5時半から夜の8時近くまで、お盆の棚経に走り回ります。私は、近くのお寺のお手伝いに数日行く以外は、毎日数軒、お参りが増える程度、おそらく近隣で一番ノンビリしている僧侶です。

 師走というと、先生もお坊さんも忙しく走り回る月ということですが、僧侶が本当に走り回るのは今月なのです。

 でも、棚経は普段お会いできない方にお目にかかれる大事な機会です。本当は、少しでも家族の方とお話しして、さまざまな状況をうかがったり、仏さまの御教えについてお話ししたりしたいものですが・・・何百軒もの檀家さんを回る友人のお寺のような場合、お茶をいただく時間もありません。

 その点、慈雲寺に直接棚経を頼んでくださるお宅では、ゆっくりお盆の意義などについてお話しもできるのでありがたいです。確かに、今日の悩みは水道からの水だけ・・・これは幸せというのでしょうか?でも、お水が温かいと、仏さまにお供えする花が、アッと言う間に元気がなくなります。「お金」を欲しがるのは、僧侶にとって何より恥ずかしいことです。本来、托鉢でお供えしていただいたものをありがたくいただくだけで暮らしていくべきなのですから・・・でも、お供えの花が、アッと言う間に元気がなくなっていくのを見ると、毎朝、お花を替えられる余裕があればいいなぁ・・・とつい思ってしまいます。

 水道のお湯は、やはり悩みのたねのようです。

◎今日の写真は、カナダの西海岸で見た、サーモンベリーの花です。

お墓参りの日にちは、それほどこだわらなくても良いのでは?(お盆の期間について)

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 先日、ある方が「お盆のお参りをしていだたきたいのだけれど、8月13~15日の間では家族皆んなで集まることができない。別の日でも良いか?」というご相談に見えました。

 慈雲寺のある名古屋市周辺では、8月の13日から15日を「お盆の期間」とする家が多いようです。しかし、全国的にみると、実は日にちは一定していません。例えば、有名な京都の大文字焼きは、お盆の送り火なわけですが、8月16日に行われます。

 お盆は旧暦(太陰暦)の7月12日から15日というのが一般的でした。新暦太陽暦)を使うようになってから、だいたい太陰暦とは一か月ぐらい差があるので、「8月12日から15日がお盆」という認識が広まったようです。

 東京周辺では、新暦にしたがって、「お盆は7月」という風に変わっているのも面白いですね。しかし、「お盆休み」は相変わらず8月で、お盆の帰省ラッシュも8月です。

 さて、日にちに厳密にこだわるなら、正確に旧暦の7月12日~16日をお盆とすべきでしょう。今年で言えば新暦の8月22日がお盆の入りです。沖縄などでは、今でもこの方式で、毎年新暦でのお盆の日にちが変わります。

 こうしてみると、お墓参りや御先祖をお迎えする日は、子孫の側の都合で変わってくるということです。それでも、心からご先祖をお迎えする気持ちがあれば、ご先祖は必ず答えて下さいます。お盆の時にしか帰ってこられないわけではないのです。

 盆、暮れ、春秋のお彼岸、祥月命日など日には、お寺参り、お墓参り、僧侶を自宅に招いて仏壇での読経などをお勧めします。しかし、そういう日にちはきっかけに過ぎません。思い立った日が一番良い日なのです。

 家族が集まれる日にご先祖をお迎えして、御供養をさせてもらう・・・この気持ちに、ご先祖さまも必ずこたえて下さるでしょう。

 慈雲寺では、宗派にかかわらず、皆さんのお気持ちに沿った御供養をさせていただきます。どうぞ、お気軽にご相談ください。

◎今日の写真は、カナダのブリティッシュコロンビア州から米国のアラスカ州に入る、通称「氷河ハイウエイ」と呼ばれている道です。沿道には、たくさんの氷河が見えます。

名古屋大空襲と慈雲寺

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 8月に入りました。いつもは、いたって暇で、たいていの日々をのほほんと暮らしている慈雲寺ですが、やはり8月はお盆やお施餓鬼で日程表がうまっていきます。

 でも、8月は原爆のこと、第二次大戦末期の空襲のこと、そして終戦のことなど、毎朝、御供養の読経をさせていただかないではいられない日々。ゆっくり考えたり、祈ったりする時間が大事になってきます。

 私の祖母も母も、東京大空襲の経験者です。祖母は2・26事件の日のことも良く覚えていて、そこから終戦までの日々を時々語ってくれました。それで、東京への空襲のことは本を読んだりして知っていたのですが、慈雲寺に赴任してから、名古屋の惨状についても少しずつ知るようになりました。

 慈雲寺は明治23年の創建ですから、名古屋市内では最も新しいお寺の一つです。幸い、名古屋市のはずれに位置していたために、戦争の被害を受けることはありませんでした。しかし、長い歴史のある市内の有力寺院の多くは、第二次大戦時の空襲で建物に壊滅的な打撃を受けています。特に市の中心部にあった寺院は、戦後の区画整理のために移転したり、境内地の多くを失ったりしたところも少なくありません。墓地も移動を余儀なくされ、市立の霊園に統合されたりしています。

 戦後、建物を建て直したり、修復した寺院のほとんどは鉄筋コンクリート造です。それ以外の素材では建築許可が下りなかったと聞いています。その結果、慈雲寺のように、総ケヤキ造りで、100年以上の歴史のある市内の寺院は例外的なものになってしまったわけです。

 

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 慈雲寺の建物は、当時、日本屈指の寺社大工だった小野田又造の作品です。とても贅沢に作られており、三河地震など、大きな地震にも良く耐えています。

 しかし、なにしろ100年以上、大規模な補修が行われていませんので、大雨にも地震にも・・・・

 せめて空襲の心配はしなくて良い国であって欲しいものです。

 8月は、毎朝、戦没者の方々のために御供養させていただくつもりです。

◎今日の写真は、カナダ西海岸の沿岸部山岳地帯の写真と、慈雲寺の本堂です。

 

犬山温泉の招待券をいただきました。感謝!

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 先日の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」においでになって下さった方から、嬉しいお手紙をいただきました。ご連絡先が書いてなかったので、(いつもこのブログを見て下さっているとのことでしたので)ここでお礼申し上げます。本当にありがとうございます。

 とりわけ、講座の感想を聞かせていただいたのは有り難いです。「面白かった」と言っていただけてホッとしました。「ここがわかりにくかった」とか「もっとこんなことにも言及して欲しかった」というようなことがありましたら、またぜひ聞かせてください。

 お手紙と一緒に、犬山温泉の利用券が入っていました。思わずニコニコ!少し涼しくなったら、明治村に写真を撮りにいきたい(私は明治の和風洋館が大好き!)と思っていたところです。帰りに温泉に入れるなら、大満足の一日になることでしょう。ありがとうございます。

 「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、毎月一回、身近な話題を取り上げて、仏教というものの考え方の基本を御一緒に学んでいこうというものです。「講座」というほど堅苦しいものではありません。どなたでも歓迎いたします。

 8月は26日の日曜日10時より行います。テーマは「幽霊と仏教」です。「幽霊」とは何なのか?仏教では幽霊をどう理解しているのかというようなお話しをしたいと思っています。

◎今日の写真は、カナダのブリティッシュコロンビア州にあるベア氷河です。