慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

4月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、4月21日(日)10時より行います。テーマは「法然上人がひらいた『浄土門』とは何か。Part 3 」です。法然上人の弟子、弁長、親鸞、証空が、師の教えをどのように受け止めていたのかをご一緒に学びましょう。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

子安弘法さんの法要

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 慈雲寺のある桶狭間名古屋市内ですし、周辺には新しく開発された住宅地や団地が広がっています。しかし、昔ながらの「村」の生活もまだまだ色濃く残っています。それを象徴するのが、たくさんの「講」の存在です。「講」は、信仰を同じくする人々の同好会やクラブのようなものですが、村の伝統を教えあったり、さまざまな助け合いの活動を行います。

 「講」の参加者は、桶狭間の「住人」であり、地元の仲間・・・今も、庚申さまの講を始め、阿弥陀さまのお像を数か月ごとに厨子に入れて担ぎ、講の参加者の家を次々とまわる阿弥陀講、道元禅師のお姿を写した掛け軸を数か月ごとに交代でお守りする道元講などがあります。

 そして今日、私が法要の導師として呼んでいただいたのが、子安弘法の講でした。弘法大師には、旅先で急に産気づいた女性を法力で救い、玉のような子供を産ませたという伝説があります。このことから、安産と子育てにご利益がある「子安弘法大師」への信仰が生まれたのです。

 この講の参加者は、各家に小さな赤子を抱いて旅する姿の弘法大師像をお祀りしています。一年に一度、各家からこの子安弘法像を持ち寄って公会堂に集まり、僧侶を呼んで法要を行い、子安弘法の和讃を一緒に歌うというものです。

 一緒に食事をし、お菓子を食べながら半日のんびりと女性と子供たちだけで過ごすのは、特別な楽しさがあります。こういう法要に呼んでいただいて、私もとても楽しく思いました。

 講の活動は近年、だんだん参加者も少なくなってくるようですが、実に残念なことだと思います。子安弘法には子育てを始めた若い女性からお年寄りまで一緒に楽しむのですから、こういう伝統が生きている地域はコミュニティのつながりも親密で、子供たちの豊かな心を育むのにベストな環境です。

 ぜひ来年も法要に呼んでいただき、皆さんと一緒に子供たちの健よかな成長を喜びたいものです。

◎今日の写真はフィンランドで見た中世のアクセサリーです。スカーフやマフラーを止めるもののようです。寒い北欧の冬でも、おしゃれを楽しんでいたのですね。