慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

4月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、4月21日(日)10時より行います。テーマは「法然上人がひらいた『浄土門』とは何か。Part 3 」です。法然上人の弟子、弁長、親鸞、証空が、師の教えをどのように受け止めていたのかをご一緒に学びましょう。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

あなたは幽霊を見たことがありますか?

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 今日は少し長い時間電車に乗っていたので、その間に宮部みゆきの『チヨ子』という短編集を読みました。そこに『いしまくら』という題名の作品が含まれていました。

 それを読んでいるうちに、先日ある方から「庵主様は幽霊を見たことがありますか?」という質問を受けたことを思い出しました。

 『いしまくら』の中に、こんな文章がありました。「人は見たいものを見る。外界を見ているつもりでも、結局は自分の心の内側を見ているだけなのだ。」

 この小説に登場する男は、女子学生を殺してしまうのですが、別の場所に‟現れた”幽霊を目撃し、その目撃談が結局は自分が殺した少女を描写していたということがわかるのです。

 「彼の内側には、いつだって、本当に本物の幽霊がいたのだ。彼の内なる良心は幽霊の形を成して彼の心の底に居座っていた。そして彼を脅かしていた。」

 私はこの世の中に、説明できないもの、見えないものが存在することを否定しません。幽霊を見たという人も頭から否定はしません。それを「見た」人にとっては「存在」するのですから・・・

 しかし、ほとんどの場合、それは私たちの心が作り出した妄想でしょう。罪悪感や怯えが生み出す、「見たいものを見ている」状態だと思うのです。

 慈雲寺に赴任してから、古い家屋が発する不思議な音を聞いたり、部屋の隅の暗がりが、そこだけ妙に漆黒に見えたりとか・・・いやいや・・・私もいろいろな不安があったのでしょうね。

 善いことをする、悪いことを避ける、他の人々のためにできることをさせてもらう、ご先祖や恩人たちを大切にする・・・こうした基本的な「善き暮らし」を続けている人に幽霊はなかなか現れないのではないでしょうか?