慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

3月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は3月17日(日)10時より、お彼岸の法要も兼ねて行います。テーマは「法然上人が開いた『浄土門』とは何だったのか?その2」です。どなたでも歓迎いたしますので、お気軽にご参加ください。

証空と道元という兄弟 Part1

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 先日、曹洞宗の本山である総持寺で数日を過ごすという、素晴らしい体験をさせていただきました。総持寺の僧侶の方々とお話する機会もあったのですが、「御存じかとは思いますが、道元さまと、うちの宗派の流祖証空さまは、兄弟なんですよぉ。」と聞いてみても、誰一人、道元さまの兄弟のことはご存知ありませんでした。証空さま、そんなに無名???まあ、うちは弱小宗派ですからねぇ。けっこうトホホ・・・

 まあ、僧侶はその出自がどうとか、兄弟がどうとかいうことはあまり関係がないので、高名な僧侶でも家族関係があいまいな方はすくなくありません。だから、兄弟といっても知らなくても別に問題はないのですが、この二人の信仰、思想の違いがあまりに鮮やかなので、私はとても興味があるのです。

 これから数回にわたって、この兄弟について書いていきたいと思います。

法然と証空(証空のショウは旧字を使うのが望ましい)

 日本にお念以下証空)仏の信仰を確立したのは、法然源空上人(法然上人:以下法然)です。善慧坊証空上人(は、法然のもとで出家し、法然が遷化するまで23年間にわたって師僧の直近に使えた高弟です。

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法然上人の御本廟:西山浄土宗総本山光明寺

 法然には優れた弟子がたくさんいましたが、現在まで続いているのは、三つの流れだけです。一つは弁長上人(以下弁長)から始まっている浄土宗鎮西派(現在の浄土宗)、親鸞聖人(以下親鸞)から始まっている浄土真宗。そして証空から始まっている浄土宗西山派(現在の浄土宗西山三派。慈雲寺はこのうちの一つ西山浄土宗に属しています。)

 弁長も親鸞も、もちろん非常に優れたお弟子でしたが、もともと比叡山で修行した方々で、法然の教えを直接受けた期間は10年に満たないものでした。証空は最初から法然もとで出家し、法然の最も円熟した思想を直接教えられたという、とても恵まれた方だったと言って良いでしょう。

 証空は理論的に思考を組み立てるのが得意だったようで、仏典による典故に細かくこだわった人です。そのうえで、徹底的な他力思想にたどりついたところが、とても興味深く私には思えます。(つづく)

◎今日の写真は、大阪府立陶磁器博物館で見た双子の壺です。一見そっくりでも、実は全く違うというのが、証空と道元の兄弟のようです。