お正月そうそう、「出家をしたいと思っているのだが、まずどこから始めれば良いかわからない」というお電話をいただきました。声の調子も、やり取りをしている最中の話し方もとても冷静で真摯がお気持ちが伝わってきました。
どのような状況であれ、「尼僧という生き方」に興味を持って下さる方がいらっしゃることは、とても嬉しいことです。このブログは慈雲寺の行事の告知のために開いたのですが、いつも一番アクセスが多いのは「出家」とか「尼僧」とかいう言葉をキーワードにした記事のようです。
ネットで「尼僧」を検索すると、このブログが上の方に出てくるからでしょうか・・・
事前の連絡もなく、突然訪ねて下さるかたもあります。月参りなどでお寺にいないこともあるのですが、お会いしてお話するのはいつでも歓迎します。
「出家したい」と慈雲寺を訪ねて下さるかたに、いつも最初におききするのは、「出家」を人生のリセットに利用しようとしてもうまくいかないだろうということです。
人は結婚や留学、転職、そして出家などによって、一挙に人生の方向性を変えようとすることがあります。しかし、たいていはうまくいきません。私たちが背負っている「業」や「縁」というものを無視して、無理やりハンドルを切ろうとしても、なかなか思うようにはいかないからです。
もう一つは、尼僧になろうとするまえに、仏教徒になることが先だろうと私は思っています。世俗から離れたいという気持になることはわからないでもありませんが、もしかしたら、尼僧よりも、カトリックの修道女の方が向いているかもしれませんよ?
まずは「仏教」というものの見方、考え方を知ってから出家を考えてみてはどうでしょうか?
どの宗派に属するかも大事なことです。私は幸い、浄土宗西山派(西山浄土宗)というとてもマイナーな宗派と出会い、法然房源空上人(法然上人)から善慧房證空上人に伝えられた教えを素直に受け止めることができました。
もちろん、西山派の僧侶としては、できるだけ多くの人に、この教えを広めたいと思っていますが、「禅宗の厳しい修行の方が、リセットできそう」と感じる人もいるかもしれません。
まず、「仏教というものの見方、考え方」の基本を知りたいという方におすすめなのは、朝日新聞社から出版されている梅原猛さんの『梅原猛の授業 仏教』です。ご存じのように梅原さんはもともと西洋哲学を研究していた学者ですが、仏教にも深い造詣をもっていた方です。この本は、梅原さんが京都の中学生に対して行った授業の講義録です。
宗教というもの全般から説き起こし、仏教の基本的な考え方を専門用語をあまり使わずに、しかし十分に深いところまで触れて語っています。アマゾンでも簡単に入手できますので、まずはこの本から始めてはいかがでしょう。宗派に偏らずに、仏教の基本を学ぶことができるでしょう。
◎今日の写真は郡上八幡の冬景色です。