慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

4月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、4月21日(日)10時より行います。テーマは「法然上人がひらいた『浄土門』とは何か。Part 3 」です。法然上人の弟子、弁長、親鸞、証空が、師の教えをどのように受け止めていたのかをご一緒に学びましょう。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

極楽はけっこう忙しい所?!

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當麻曼荼羅

 上の写真は奈良の当麻寺に伝わる當麻曼荼羅の複製です。この曼荼羅は『観無量寿経』に基づいて極楽の様子を描いたものです。曼荼羅ですから、細かい一つ一つの表現に象徴的な意味があると考えられています。

 この曼荼羅を見ると、なかなか極楽や良いところのようです。そこへ迎えとっていただけるのは、なんともありがたいなぁ!

 でも、よく見るとのんびりしている様子でもありません。私たちは温泉などに入ってのんびりしているときに「極楽、極楽・・・」なんて気分になりますが、當麻曼荼羅の中の菩薩たちはとても嬉しそうですが、なんだか忙しい感じ・・・

 イスラム教の聖典コーランに描かれる天国では、男性たちは美しい女性にかこまれ、冷たい泉とおいしい食事でのんびりしているようですが、極楽の様子はずいぶん違います。

 極楽はリラ~~~ックスする所ではなく、極く楽に修行のできる場所のようです。末法の時代に生きる凡夫にとっては、お釈迦様が8万4千種類も悟りへの修行の道を示して下さっても、なかなかその道を究めることができません。それを哀れんだ阿弥陀仏が、理想的な環境を整え、そこに迎えとって下さることを約束して下さいました。

 それが「極楽」です。當麻曼荼羅の中では、菩薩たちは本当に嬉しそうに阿弥陀仏のお説教を聴き、修行を続けているのです。極楽での修行はけして苦しいものではなく、喜びに満ちたものになるでしょう。

 そして、極楽へ迎えとっていただけることがわかった私たちは、この世にいる間にも、少しでも極楽での修行を始めようというのが、念仏者の暮らしです。環境も私たちの能力もまったく不十分ではあっても、極楽行きのポイントを貯めるためではなく、今から極楽での暮らしを始めることができるのです。

 極楽での修行の基本は「慈悲」。私たちも、自己中心的な思いからできるだけ離れ、他の人のためになることをさせてもらう「利他」に生きることを心がけるのが、この世での極楽暮らしの第一歩です。