慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

4月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、4月21日(日)10時より行います。テーマは「法然上人がひらいた『浄土門』とは何か。Part 3 」です。法然上人の弟子、弁長、親鸞、証空が、師の教えをどのように受け止めていたのかをご一緒に学びましょう。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

無財の七施 Part 2 心施

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熱帯の花のはずなのに、夏には全く咲かず、冬になって咲き始めたハイビスカス。なぜ???今朝も木枯らしに揺れながら咲いています。た。

 

 布施というと、財物での布施をまず思い出しますが、金銭や物ではない布施もたくさんあります。

 大事なことは、布施が修行だということです。財物を施してやることによって、その善行の御利益が返って来るというのではありません。

 私たちが最も執着しているもの・・・財物、時間、労力(命)などを他人のために手放すことによって、自分を苦しめている執着・煩悩から離れる修行なのです。

 

 財物による布施以外の布施は7種類に分かれています。その一つが「心施」です。

 心施は、思いやりある心、心遣いを人に施すことです。

 

 先日、早朝の冷え込む時間にお月参りに自転車で出かけました。仏壇の前に座ろうとしたとき、その家の奥様が、うっすらと湯気のあがっている蒸しタオルを出してくださいました。

 「自転車に乗っていらしたら、きっと手が冷たくなっているでしょう。このタオルで少し暖めてください。」と笑顔です。

 これこそ、前回お話した「和顔施」と「心施」の両方を布施する行いです。

 心施は、相手の状況や思いをしっかり観察して、今何が最も求められているのかを考え、心遣い、思いやりを施す修行です。

 けして大げさなものでなくても良いのです。暖かなおしぼりに手を包むと、一瞬で指先のこわばりが融け、心まで温かくなりました。

 こうした優しさ、思いやりで心を温めれば、冬の寒さもなんのそのですね。

 

 問題は、「思いやり」と「おせっかい」の微妙な違いです。「~~してあげている」という気持ちや、「褒めてもらいたい」という気持ち、「見返りが欲しい」という気持ちなどが行動にまとわりついている場合は、布施ではありません。

 布施は、見返りをいっさい求めないことが基本。それでこその修行なのです。

 見返りを求めない、本当の「心施」なら、「思いやり」と「おせっかい」の違いは見えて来るのではないでしょうか?

 

 

 

無財の七施 Part 1  眼施と和顔施

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21年の年末に雪が降った時の写真です。サザンカの花と雪の白さが美しいコントラストでした。

 今朝もお月参りにでかけようとしたら、ハラハラと雪が舞い始めました。トンビを着て自転車で出かけます。ほんの少しの雪ですら、寒くて、自転車も滑らないかと心配・・・私の父は新潟で鉱山を経営していたことがあって、雪深い山奥で子供を育てることは難しいと単身赴任でした。一年の半分近くも雪に埋もれる豪雪地帯で、家族のために独りで働いていてくれた父のことを思い出した朝でした。

 

 さて、先日、家族連れでお参りに来て下さった方があります。本堂前のおみくじを引いて、「あ、大吉だぁ!」と大きな声をあげて笑い合っていました。

 そのご家族の笑顔がとても素敵だったので、「和顔施」のことを思い出しました。

和顔施とは、『雑宝蔵経』というお経に説かれている「無財の七施」の一つです。

 布施というと、金銭での布施のことだと思われる方が多いでしょうが、本来、布施とは欲望や執着など、自分を惑わせ、苦しめている煩悩を手放すための修行なのです。

 私たちが時間や労力、いわば命を削って生み出している金銭に執着が生まれるのは、ある意味当然のことでしょう。それを喜んで捨てる「喜捨」していくことで、その執着を少しでも手放すことによって、自分自身を苦しめている煩悩から自分を解放することができるのです。

 財物を喜捨することだけが布施ではありません。「無財の七施」は、誰にでも、いますぐにできることが示されています。

 その一つが「和顔施」(わげんせ)です。穏やかな笑顔、表情で人に接することをいいます。自分の心の中のこだわり、怒りなどをしっかり見つめ、原因を考え、それにこだわる気持ちを手放して行くことで、表情も穏やかになっていきます。

 朝起きたら、鏡に向かってニッコリしてみませんか?「面白いことなど何も無い!」という方も、今朝、無事に目が覚めたことだけでも十分にニッコリする価値があるとは思いませんか?

 ニッコリでスタートすれば、和顔施を行うチャンスが次々とやってくるでしょう。

 

 「眼施」(げんせ)は、優しいまなざしを人に施すことです。ま、顔は穏やかなのに、目だけ意地悪という人もいないでしょうから、眼施和顔施はワンセットでしょうね。

 「目は口ほどにものを言う」という言葉もあります。相手の目を直接見てしまうと視線がきつくなりすぎると感じるなら、眉毛の間、眉間のあたりを見ると良いでしょう。柔らかな視線は布施の修行の第一歩です。

 

 あ、もちろん、慈雲寺は財施も有り難く・・・・・・

おみくじが大人気!

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慈雲寺には明治時代のデザインのレトロなおみくじもありますよ。

 

 浄土系の寺院では、あまりおみくじとかお守りとかの頒布には熱心ではありません。もちろん専用の販売所まで建てて気合いを入れているお寺もあるし、浄土真宗系の寺院のように「教えに反する」と厳しく排除しているお寺もあります。

 

 慈雲寺でも、基本はおみくじもお守りも無しですが、弘法大師さまの前には、明治時代からのレトロなデザインのおみくじが置いてあります。まあ、めったに引いて下さる方もいませんが・・・・

 

 三年前から、お正月に限って別のおみくじも頒布しています。もともとこれは売る為のものではなく、修正会や1月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」に来て下さる方々にお年玉として用意しているものです。中には、それぞれの年の干支を象った、ちょっと可愛らしい根付けが入っていて、おみくじは、まあおまけのようなものです。

 これを弘法様に御供えして、ご祈祷し、皆様に差し上げているわけです。

 しかし、仕入れ(笑)の単位が100個なので、配布するにはだいぶ過剰。そこで、お正月の三が日から小正月ぐらいまでは、本堂の入り口にも置いて、「1つ、200円。お賽銭箱に入れてください」と張り紙付きで出しています。

 ま、いつもそれほどたくさん売れるわけではありませんが・・・・と思って、今朝本堂を開けたら、なんとおみくじを置いた箱が空に!えええ?正月から泥棒?おみくじ持って行ったの?????と思っていたら、お賽銭箱にちゃんとお金が入っていました。

 今年の根付けは特に可愛らしいデザインだったからかなぁ?

 弘法様の御利益が皆さんにも行き渡ることを願っています。

 

 あ、まだおみくじは残っていますから、ご心配なく・・・

 

 ちなみに、中日新聞によると今日の私の運勢は「座禅は何も役立たぬ。されど偏らぬ心に気づく」です。はぁ~~~??となって、なんだか笑ってしまいました。このどうにでも解釈できそうなところが味わいというやつでしょう。明日も楽しみ!

慈雲寺と中日文化センターでの行事のお知らせ(2022年1月)

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真冬でも美しい花壇を楽しめる鶴舞公園

 

 今日は今年初の法事がありました。お正月に法事や月参りというのは合わないと考える方もあるようですが、私は親族がたくさん集まるお正月こそ、祖先を思い、供養をする良い機会だと思っています。慈雲寺のお墓にも、きれいな花が供えられ、家族でお参りにいらっしゃる方がたくさんいました。とても心温まる姿でした。

 

 さて、一月に慈雲寺や中日文化センターで行う講座などの行事のお知らせです。

 

1)1月9日(毎月第二日曜)13時30分より 鳴海駅前の中日文化センターにて   「尼僧と学ぶやさしい仏教入門講座」

今期のテーマは 「『般若心経』を現代語訳で学ぶ」です。

 

慈雲寺での法話の会は、毎回身近な話題を取り上げてお話していますが、中日文化センターでは、もう少し時間をかけて一つのテーマを掘り下げたお話をしています。今期は、宗派にかかわらず、多くの方が読誦している『般若心経』を取り上げます。

 心経は300字ほどの短いお経ですが、大乗仏教の最も特徴的な教えが凝縮されたものと言って良いでしょう。一方、空海のように、心経全体が真言であるという見方もあります。心経の歴史をたどり、多くの現代語訳を比べながら、理解を深めていきましょう。

 受講の申し込みやお問い合わせは電話0120-538-763へ

2)  1月16日 10時より 慈雲寺本堂にて

 「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」

 今月は、先月に続き、『維摩経』に説かれた「煩悩の手放し方」についてお話します。このお経には在家の仏教者が、お釈迦様の弟子たちにさまざまな質問をしていく、なかなかおもしろいお話が説かれています。

 「講座」というタイトルはついていますが、どなたでもわかりやすいお話を心がけています。どなたでも歓迎いたしますので、お気軽にご参加ください。

 

3)1月18日 「満月写経の会」 夜7時半より 慈雲寺本堂にて

 慈雲寺では、毎月の満月の夜にお月見を兼ねた写経の会を催しています。必要な道具は揃っていますので、初心者の方もお気軽にご参加ください。

 7時半から、ご一緒に『般若心経』を読誦し、毎月少しずつ内容についても学んでいきます。

 

4)1月21日 「初弘法」と四国八十八カ所のお砂踏み 慈雲寺本堂にて

初弘法の短い法要は10時より。お砂踏みは全日いつでもお参りいただけます。

 慈雲寺には、珍しい若々しいお姿の弘法大師のお像が祀られています。お肌もツルツルで、玉眼の入った瞳もキラキラです。美肌に関するお悩みに御利益があるかも?

 21日は弘法大師のご縁日です。10時から短い法要を行い、御大師様のお話を少しいたします。お砂踏みは、四国の霊場から集めたお砂を踏んで、ミニ巡礼を体験していただけます。一日で、四国を巡ったのと同じ功徳があると言われています。

 

◎慈雲寺へのアクセス情報や周辺の地図は慈雲寺のホームページ jiunji.weebly.com

の CONTACT のページをご覧下さい。

◎慈雲寺での行事は原則として無料です。ご先祖の供養やお寺の維持のために、お気持ちを御喜捨いただければ有り難く存じます。

◎慈雲寺はみなさんのお寺です。宗派にかかわらず、仏事やその他、どのようなご相談にも応じますので、お気軽にご連絡ください。電話052-621-4045

 

 

朝、普通に目が覚めるだけで、「最勝の生」です!

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お釈迦さまがお悟りを開かれた大菩提寺で花を捧げる人たち

 

 今朝書いた今年最初のブログ記事に、ときどきコメントを残して下さるももはなさんが、

”朝、普通に目が覚める事。コレが如何に素晴らしいか忘れている人が多いね。”

 とコメントを残して下さいました。本当にそう!

 檀家ゼロでなかなかきびしい状況のお寺の住職だけど、今朝も普通に目覚めて、なんとか体も動くし・・・・阿弥陀様もご機嫌麗しそうなお顔。仏様に御供えする花も十分にあるし、お線香もある。なんとまあ、幸せなことですね。

 

おまけに、ご近所の葬儀会館から、お年賀に「いちご」が送られてきました。お得意様扱いか???

 

 仏教では、私たちはこれまで、六道の中で何度も何度も生き死にを繰り返して輪廻して来たと考えます。地獄にいたことも、修羅の世界で生きたこともあるでしょう。そして人間に生まれるのはとても難しく、さらには仏法の教えに巡り会うのも難しい・・・まあいろいろポンコツではありますが、私は今生で人間に生まれ、なんとか仏の教えにご縁を結ぶことができた。

 年の初めに改めて有り難く思っています。

 ↓の文章は曹洞宗をお開きになった道元禅師の『修証義』の中の言葉です。

 

「人として生まれることは難しく、仏法に遇うことはまれである。今の我々は、これまでに重ねてきた善い因縁に助けられ、既にありがたくも人として生まれたばかりではなく、遇いがたい仏法に遇うこともできた。生死輪廻を繰り返す中での善い人生であり、最も勝れた人生である。」

 

 「最勝の生」を今年も精一杯・・・でも、時々のんびり、穏やかに過ごしていきましょう。

修正会を無事終えて、新しい一年が始まりました

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明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

 今、元旦の深夜1時20分です。8人の方とご一緒に修正会を勤め、新しい年を迎えることができました。

 昨年末にお花を御供えして下さる方が何人もいらしたり、裏庭に勝手に伸びてきた松が良い具合に枝を広げてくれたので、お正月用の仏花を楽しく生けることができました。

 庫裏の掃除はとうとう年を越してしまいましたが、旧暦の新春までには何とかしたいと願っています。

 

 今年は中日文化センターで講義を続けさせていただけることになったので、しっかり勉強しなおして、わかりやすいお話を心がけていきたいと思っています。

 

 コロナ禍は、簡単には収束しないのではないかと思いますが、暮らし方、生き方を考えるきっかけにしていかなければならないでしょう。

 慈雲寺のすぐ近くには、近隣で一番大きな救急医療機関があるので、今夜も救急車の音が聞こえます。お正月でも、待ったなしで命を護ってるために働いている皆様に深く感謝しています。

 

  慈雲寺は皆様の「いきつけのお寺」になることを願っています。どんなご相談にも可能な限り応じますので、お気軽にご連絡下さい。電話052-621-4045

 

皆様が穏やかで苦しみ少ない一年を過ごされることを祈りつつ・・・

 

心に積もった一年の煩悩をいったん手放してから新年を迎えましょう・・・・修正会のお誘い

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部屋の汚れはもちろんですが、心に積もった「垢」も落として新年を迎えましょう!

 

 今日は朝からご近所のお友達が助っ人に来て下さって、玄関周りをきれいにして下さったので、どうにかこうにか新年を迎えることができそうな感じになってきました。

 慈雲寺は自然の季節の移ろいとともに暮らしていきたいので、新年は旧暦で・・・といいながら、掃除を先延ばしにしてはいけませんね。

 

 さて、お寺では、深夜12時。日付が新年になると同時に「修正会」という法要を行います。一年最初の法要です。

 その直前から梵鐘のあるお寺では鐘をついて行く年を送り、新年を迎えます。梵鐘は108回突くことになっていますが、どこのお寺も108つに限定しているところは少ないでしょう。

 この「108」の数字ですが、仏教では、私たちの心を悩ます煩悩を108つに分類する説があります。鐘を一つ打つごとに、その煩悩を消して、新しい年を迎えようというのです。

 仏教では、私たちが自己中心的に「自分の都合」にこだわればこだわるだけ、「思い通りにならない」という苦しみに襲われると教えています。

 これが煩悩の本質です。

 煩悩を打ち消すことはきわめて難しいですが、握りしめた手をいったん開き、大きく体全体をストレッチしながら、全身に新しい血を行き渡らせることができれば、心にもあらたなエネルギーが満ち、悩みを解決する光も見えてきやすくなるでしょう。

 

 新たな年を迎える前に、煩悩をいったん手放してみませんか?煩悩はまた生まれてくるでしょうが、煩悩をたたきつぶそうと悩むより、「いったん横に置いておこうか」、「まあ、ちょっと握り拳を開いて、手放してみようか」という気持ちが大切です。

 

 初詣に行く前に、ご近所のお寺にお参りしてみませんか?大晦日は、大掃除の仕上げにお墓の掃除もおすすめです。

 慈雲寺では、31日の深夜11時45分から修正会を行います。どなたでも歓迎いたしますので、お気軽にご参列下さい。ご近所の駐車スペースもありますので、お車でおいでいただいても大丈夫です。