仏教徒は僧侶であっても、在家の人であっても、必ず守らなければならない五つの「戒」があります。
- 不殺生戒(ふせっしょうかい) - 人や動物など、生きているものを殺してはいけない。
- 不偸盗戒(ふちゅうとうかい) - 自分のものでないものを盗んではなならい。
- 不邪淫戒(ふじゃいんかい) - 性におぼれたり、不倫など不道徳な性行為を行ってはならない。
- 不妄語戒(ふもうごかい) - 嘘をついてはならない。
- 不飲酒戒(ふおんじゅかい) - お酒を飲んではならない。
仏教の教えに従って生きると決意したとき、この五戒を「良く保つ」と誓うのです。もちろん、五戒を厳格に守って暮らすことは非常に難しいですが、できるだけの努力をし、守れないことを反省していくうちに、生き方が整い、より穏やかに暮らせるようになってくるのです。
その五戒の一つに「不飲酒戒」(ふおんじゅかい)があります。お酒を飲んではいけないという戒です。
キリスト教でもイスラム教でも、飲酒を禁じている宗派はたくさんありますね。酩酊すると戒めをやぶりやすくなってしまうからでしょう。
私の愛読書(?)の一つに『百四十五箇条問答』というものがあります。これは、慈雲寺が属する浄土宗西山派の宗祖である法然房源空上人(法然上人)が、一般の信者さんから寄せられた様々な問いに、上人らしい率直で誠実な態度でお答えになっているものです。
その問答の一つに「さけのむは、つみにて候か?」というのがあります。五戒の不飲酒戒についての質問でしょう。それに対する法然上人のお答えは「ま事はのむへくもなけれとも、この世のならひ」
つまり、「本当は飲むべきではないけれども、この世の暮らしのならいだから・・・・」というのです。
法然上人は何よりお念仏を大事にしたお方です。この世の慣習になっていること、日常の中でよく起こることに目くじらたてて避けようとするより、お念仏を喜ぶ生活のことを考えよとお教えくださっているのだと思います。
では、法然上人はこの世のおつきあいならお酒をどんどん飲んで良いと言っておられるのでしょうか?それは違うでしょう。あくまでも「戒」を守ることが前提。度を越さないように自らを制するのが仏教徒の生き方だと思います。
それにつけても、法然上人の「念仏第一」のおおらかな教えは魅力的ですね。
◎今日の写真は一昨年の9月28日に、カナダ・メープル街道のロレンシャン高原で撮った紅葉です。朝日を受けて鮮やかな紅に染まっていました。