昨日、12月8日は日本が第二次世界大戦に突入した日です。昨日の勤行のときは、全ての戦没者の方々の増上菩提を祈らせていただきました。
慈雲寺に配達される新聞の一面には何もそのことに触れられていませんでしたが、社会面には戦争体験者のインタビューが大きく載せられていました。
私は数年前まで住んでいたカナダやアメリカには、メモリアルデーという記念日があります。これは戦没将兵を追悼するものです。この日の前後には戦没者や戦傷者への募金が始まります。募金をすると戦場に流れた血を象徴するポピーをデザインしたピンをくれます。数多くの人の胸にピンが付けられ、長年カナダに住んでいた私は、このポピーの花を見るたびに複雑な思いでした。
また、メモリアルデーの当日には、一日中テレビでもラジオでも真珠湾攻撃の古い映像が流され続けました。当時のカナダは英国軍と共に戦い、ヨーロッパ戦線へ派兵されたのです。メディアの論調は全て、日独伊と戦う「正義」の戦争だったというもので、「ああ、ここは戦勝国なんだなぁ」とあらためて思いました。
カナダではアメリカの放送も視聴することができるのですが、毎年両国の論調の違いには驚かされました。カナダは「たとえ正義の戦いでも、傷は深く、もう二度と戦争に巻き込まれるべきではない」というのが基本ですが、アメリカは「正義の戦いならやむを得ない。アメリカは今も世界のために戦っている」という主張が繰り返されるからです。
紛争を武力で解決しても、けして解決にはなりません。憎悪の連鎖を作るだけです。戦争に「大義」も「正義」もありません。そこにあるのは憎悪と殺戮だけです。
仏教は人を殺すことを厳しく戒めています。戦争は長く、長く、人の心に傷を残します。インドで仏教の興隆に大きな貢献をしたアショーカ王は、祖父や父がインド全土を征服する過程ですさまじい殺戮の現場を見て、仏教に深く帰依したといいます。アショーカ王は武力ではなく、慈悲深い統治と粘り強い説得で国を治めたと伝えられています。
今、日本はアメリカに同調して再び「“正義”の戦い」に加わろうとしているのではないでしょうか?年々数少なくなっていく戦争体験者の皆さまが、その体験をもっと語ってくださることを願っています。
◎今日の写真は、カナダのバンクーバーで見た落葉です。