慈雲寺の属する西山浄土宗の宗祖は、日本に「南無阿弥陀仏」のお念仏の教えを確立された法然房源空上人(法然上人)です。源空上人のお弟子にはたくさんの優れた方々がいました。しかし、現在まで続いているのは、浄土真宗の、親鸞聖人、浄土宗鎮西派の弁長上人、そして浄土宗西山派(西山浄土宗)の證空上人の三つの流れです。中でも證空上人は、法然上人のおそばで20年以上も直接教えを受け、師の最も円熟した晩年の教えを受け継いでいると言われています。
その證空上人の思想研究の入門書となる『證空辞典』の制作プロジェクトに参加した人々が集まってお食事会がありました。当時、残念ながらプロジェクトには参加していただけなかったものの、新進気鋭の学僧として長年仲良くしていただいている方もいらして下さいました。私は旅行ライターの仕事で校正や編集の経験があったので、少しお手伝いさせていただいたのです。
『證空辞典』の制作の成果はいろいろありますが、なかでも、證空上人の教えを体系的に研究しようという若手の研究者が「仲良く」集えたことだと思います。自分の解釈をゴリ押ししようとする人もいなかったし、変に威張ったり、ゴマをすったりする人もおらず、でも疑問は遠慮なく言いあう。そして仕事が終わったら、仲良く食事。さまざまな苦労はあっても、とても充実した楽しい日々でした。
文系の研究は自然科学のように「誰が実験しても、同じ結果が出ることで正しさが証明される」というようなものではないので、「説得力のある主張」ができるかどうかがポイントになります。それを裏打ちするのが文献資料なのですが、もう一つ、仏教学者たちの「説得力」のポイントは「行動」にあります。
仏教は行動の教えです。知識だけではなく、仏教徒としてのものの見方、仏教徒らしい行為や態度が備わってこそ、「説得力」になっていくのです。
若い仏教学者の方々が、穏やかで質素、熱意のある生き方をしているのを見るのは、とても嬉しいものです。魯山人の作ったお皿でいただく料理も素晴らしかった!
◎今日の写真はカナダで一番大きな都市、トロントの冬景色です。オンタリオ湖がすっかり凍結していますね。