残された家族への「負担」を軽くするために、生前から葬儀の手配をしておきたい・・・と希望されている方は少なくないでしょう。そんな気持ちをグイっとつかむのが毎週のように新聞についてくる葬儀場の折り込み広告です。
しかし、葬儀が亡くなった方への供養であるのは当然のことですが、残された縁者の哀しみを癒す場でもあることを忘れてはなりません。値段だけを優先した葬儀では、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。そして、その時に起きたトラブルが家族や縁者の心に長い間痛みを呼び起こしてしまうかもしれません。
本当に「お値打ち」の葬儀を生前に準備しておきたいなら、普段からお坊さんとご縁を結んでおくことが一番の近道だと、私は信じています。長い日本文化が育んだ葬送儀礼は、宗教的なものであるからこそ、人々の心の支えになり、癒しになり、本当の意味での死者への礼儀になるのです。
そのためには、「この僧侶に送ってもらいたい」と思う僧侶とご縁を結んでおくことが大切です。見ず知らずの「派遣僧侶」では、葬儀は単なる形式になもので、なんの慰めにも癒しにもならないのではないでしょうか。
菩提寺の信仰が自分の気持ちとしっくり合い、心の奥のことを忌憚なく語り合える僧侶と交流できる人こそが、最も「お値打ち」な葬儀を用意できるでしょう。菩提寺が遠いいとか、自分の気持ちと合わないと感じるなら、お説教の会などに出掛けて、お坊さんと知り合う努力も必要でしょう。葬儀場を探す努力をする意思があるなら、ぜひ信仰のご縁を結んでみてはいかがでしょう。
親戚や知人の葬儀の時、とりわけ枕経に立ち会う機会がある時には、僧侶のお説教や法話をしっかり聞いてください。信仰者としての僧侶の生き方がそこに現れてくるからです。(つづく)
◎今日の写真は眼病に御利益があることで知られる、柳谷観音の浄土庭園です。