慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

4月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、4月21日(日)10時より行います。テーマは「法然上人がひらいた『浄土門』とは何か。Part 3 」です。法然上人の弟子、弁長、親鸞、証空が、師の教えをどのように受け止めていたのかをご一緒に学びましょう。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

恩人を見送りに京都へ

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 昨日、本山から連絡があって、私が本山で小坊主として修行していた時代の恩人が亡くなられたことを知りました。

 慈雲寺の属する浄土宗西山派西山浄土宗)の総本山は京都府長岡京市にあります。僧侶になるためには、最低一年、この本山の中にある学校で、仏教の基礎や宗門の教えについて学びます。この間、男性の修行僧のほとんどは本山に泊まり込んで修行するのですが、女性は施設の問題で泊まり込みができません。

 昔は本山の中に尼僧の専門道場があったのですが、女性僧侶が減少して閉鎖になったのだそうです。

 そこで、私は本山の直壇(本山の光明寺の檀家)の一人であるKさんの家に下宿させていただいて本山に通ったのです。もう30年近く前のことになります。

 Kさんは「尼僧さんの面倒を見させていただくのは、家の名誉だ。」と言って下さり、怠け者の私をさまざまな面で助けてくださいました。

 Kさんは5年ほど前からお体を悪くなさり、奥様が献身的に介護されていました。奥様は大変苦労なさった方ですが、いつも明るく、生きることに積極的でした。

 亡くなられたのは、この奥様のFさんなのです。K家は農家ですから、簡単に家を空けることはできません。しかし、息子さんご夫婦が農業を立派に継いでいらっしゃるので、そろそろ数日の旅行ならできそう・・・という時期に来ていました。

 「東京生まれの、庵主さんに案内してもらって、ゆっくり東京見物をしたい。」とおっしゃっていたのに・・・こんな小さな御恩返しもできなくなってしまいました。

 京都の実家を失ったような気持ちです。思い出すことがあまりにたくさんあって、昨日からぼんやりしてしまっています。

 会いたくなったら、「いつか」とか「一段落したら」などと言わずに、すぐ行動に移すべきです。電話でも手紙でもメールでも、思いを伝えることが大切です。

 人はいつか必ず別れなければなりません。そのいつかは、明日かもしれないし、五分後かもしれないのですから・・・・

 これから京都へ向かい、お通夜、本葬に参列します。

◎今日の写真は長岡京市にある乗願寺の大仏(おおぼとけ)さんです。信仰深いFさんも、きっと阿弥陀様に迎え取られて、極楽に旅立つことでしょう。