慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

3月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は3月17日(日)10時より、お彼岸の法要も兼ねて行います。テーマは「法然上人が開いた『浄土門』とは何だったのか?その2」です。どなたでも歓迎いたしますので、お気軽にご参加ください。

「釈迦金棺出現図」を拝みに東京へ

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京都国立博物館蔵)

 国宝の「釈迦金棺出現図」が上野の国立東京博物館に展示されていると聞いて、大急ぎで東京へ行ってきました。この絵は、京都の国立博物館に所蔵されているのですが、めったに展示されません。昨年、京都で行われた「国宝」展の時には展示されていたのですが、私が行った時は入れ替えで拝むことができなかったのです。

 私はお釈迦様の入滅の時の様子を描いた、いわゆる「涅槃図」が大好きです。仏画なので、構図や描かれている人、動物、植物などは、お経に基づいていますから、どの涅槃図でも、基本は同じです。しかし、作者によって、細かな所が違ったり、人々の表情が違ったり、画家の解釈の違いが出て、とても面白いのです。京都のお寺では、涅槃会の時期に涅槃図を御開帳するところが多いので、よくあちこちにお参りに行きました。

 さて、今回の「釈迦金棺出現図」も涅槃図の一種なのですが、他とは大きく違うところがあります。通常の涅槃図では、お釈迦様は木立の間に体を横たえて、静かに涅槃に入られています。お釈迦様が涅槃に入られることを知った母親の摩耶夫人が忉利天から降りてくるのですが、入滅に間に合いません。一方、この「釈迦金棺出現図」では、お釈迦さまは、すでにお棺の中に入ってしまわれていました。しかし、母の深い嘆きを知ったお釈迦様は神通力をもって、お棺から再び起き上がり、母親に、この世の無常について説法をしているところが描かれているのです。

 この構図は非常に珍しいもので、お釈迦様の御気持ち、摩耶夫人の気持ちが画面からあふれ出るような気迫が感じられます。周辺の弟子や信者の人々が驚愕し、そして深く感動している様子も見てとれます。

 そして何より、お釈迦様の体から放たれる光の素晴らしさ!

 合掌しないではいられない正に国宝にふさわしい仏画でした。

 1月28日まで、常設展の国宝展示室に展示されていますので、機会があったら、ぜひ上野にお出かけください。