慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

3月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は3月17日(日)10時より、お彼岸の法要も兼ねて行います。テーマは「法然上人が開いた『浄土門』とは何だったのか?その2」です。どなたでも歓迎いたしますので、お気軽にご参加ください。

家族だから言わなくてもわかる???

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 自分の思いを人に伝えることは、とても難しいことです。相手に自分の意図を正確に伝えるには、豊かな語彙、柔軟な表現力が必要です。しかし、今は、スマホやインターネットを通じてのやりとりでは、文章は短く、ぶっきらぼうになりがちです。本を読む習慣が薄れれば、語彙はどんどん貧弱になっていくでしょう。

 それでいて、相手に自分の思いを伝えたい、自分の気持ちを分かって欲しいという願いは、どんどん強くなっていきます。ツイッターのように、短時間で大きな反応を期待するメディアでは、「いいね」が付かないと不満はつのり、寂しさも増してしまいます。フォロワーが山ほどいても、結果的には孤独感が強まっていくのです。

 日本には「以心伝心」といったように、口に出して、言葉にして自分の思いを伝えなくても良いという伝統(?)があります。とりわけ、夫婦や親子のような近しい家族は、「身内なんだから言わなくてもわかる」と思いがちです。

 しかし、それは本当でしょうか?

 「以心伝心」は、もともと禅宗の教えから出てきた言葉です。仏教の真髄は言葉で伝えられるものではなく、師から弟子の心に直接伝えられるものだというのです。確かに、人間の限られた語彙で真理を語りつくすのは難しいでしょう。しかし、私たちの心の中の思いは、やはり言葉て伝えていくべきだと思います。

 とりわけ、感謝の言葉、思いやりの言葉は、口に出して、文字にして、行動で、相手に伝えましょう。家族だからこそ、長い間のつきあいのある友人だからこそ、一緒に働く同僚だからこそ・・・近くにいるものだからこそ、「わかって当たり前」ではないのです。

 人に思いやりを込めた優しい言葉をかけることは、「愛語」と言って、布施行の一つでもあります。

 反対に、怒りを込めた言葉を発するのは、相手以上に自分自身を傷つけていることを忘れないでください。怒りは毒蛇の毒よりも、その人自身を害するとお釈迦様は教えてくださっています。

◎今日の写真は宝塚市にある中山寺の仁王様です。