新型コロナウイルスの状況の激変が続き、すっかり話題から遠ざかってしまった「100日後に死ぬワニ」。私は、話題になり始めたころから興味深く見守っていました。このことが話題になれば、誰にとっても死は必ずやってくるもので、多くの場合、理不尽な状況でやってくるものだということに気が付き、仏の教えに目覚めてくれる人も出てくるのではないかと思ったからです。
しかし、100日が近づくにつれて、ニュースやワイドショーなどに不自然な頻度で取り上げられ、いよいよ100日という日には、人気歌手による歌、映画化の発表、芸能人の「ワニロス」の様子などが報道され、とても深い違和感を感じました。
最初から電通が仕掛けた「つくられたブーム」という話も出ています。電通案件かどうかは分かりませんが、映画化やグッズが100日目に合わせて、すでに用意されていたところを見ると、大掛かりな「プロジェクト」であって、けして素朴な動機によるものではないのではないでしょうか?
でも、あのワニのメッセージは味わい深いものがあるのはたしかです。私たちはいつでも「死がすぐ近くにあるワニ」に他なりません。今日、ただいまの瞬間を大切にして、せいいっぱい生きることが、生まれがたき人間に生まれてきた幸せを享受する基本だからです。
阿弥陀仏が極楽を用意して下さっているし、「極楽行きのポイント」をためなくても大丈夫ですが、生きている間は十分に生きていきましょう。
うわさに追い立てられて、無用な恐怖にかられてパニックになるのが一番哀しい生き方です。まずは落ち着いて、「我先に」の態度を反省するところから始めましょう。
◎今日の写真はお釈迦様の人間としての最後の様子を描いた「涅槃図」です。