慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

4月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、4月21日(日)10時より行います。テーマは「法然上人がひらいた『浄土門』とは何か。Part 3 」です。法然上人の弟子、弁長、親鸞、証空が、師の教えをどのように受け止めていたのかをご一緒に学びましょう。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

寂しい時はお墓参りが特効薬 Part 2

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 人間関係・・・とりわけ家族との関係で寂しさを感じるときは、お墓参りがおすすめと前回お話しました。

 コロナ禍で家族と過ごす時間が増えて、かえって寂しく感じるという一見矛盾した現象があちこちでおきているようです。寂しい・・・と感じるだけではなく、怒りが爆発して暴力にまでなった事件も報じられています。物理的、空間的な「近さ」が、かえって心の空虚さ、遠さを明らかにしてしまったのでしょう。

 理想的なのは、お墓が菩提寺の境内にあって、墓参りの前には本堂でご本尊にお参りし、帰りには和尚さんと少しお話して・・・・という流れ。広い霊園の中にお墓がある場合でも、墓石の周辺の雑草を抜き、掃除をして、墓石を拭き清め、新しい花を供えるという一連の動きをしているうちに、ざわめいていた心が静まって行くのに気が付くでしょう。

 お墓参りに行くときは、お線香選びも大切です。お線香は、仏様やご先祖への御供養というばかりでなく、祈る人の心身を清めるためのものでもあります。お香の専門店を訪ねて、お気に入りのお香を入手すると良いでしょう。香りによる癒しの効果はあなどれません。

 最近は、機械が自動でお骨を運んで来てくれる、巨大な納骨堂もあります。冷暖房完備で、墓石のような形の礼拝コーナーが造られています。仏花なども用意されていて、「手ぶらでお参り」ができるというわけです。面倒なことは一切無し。

 しかし、お墓参りの良さは、この「面倒なこと」の中にもあるのです。お線香を選び、仏花を選び、お墓の雑草を抜いて、掃除をする・・・・そうしているうちに、自分がけして一人で生きているわけではなく、何千、何万という祖先の思いに支えられていることに気が付くのです。

 「面倒なこと」をしているうちに、支えあいと凭れあいの違い、甘えと思いやりの違いなど、さまざまな大切なことをゆっくり考える余裕が出てくるかもしれません。

 近しいからこそ、意思を丁寧に伝え、きちんと説明する、その上での思いやり。時には距離を置いて、鎮静化を待つことも必要だと気が付くかもしれません。

 墓地は人の命の危うさ、短さを示す場所でもあります。問題を先延ばしせず、解決に取り組まなければ、いつ今生の別れがくるかわからないという現実を示す場所でもあります。

 そのうえで、お寺にお参りすれば、私たちが御仏のお慈悲に包まれて生きていることにも気が付くでしょう。

◎今日は、昨日の蓮華の別アングル。宇治の平等院は極楽の様子を再現した場所なので、蓮がとりわけ似合います。