慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

3月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は3月17日(日)10時より、お彼岸の法要も兼ねて行います。テーマは「法然上人が開いた『浄土門』とは何だったのか?その2」です。どなたでも歓迎いたしますので、お気軽にご参加ください。

極楽で修行中のご先祖に「怨」はありません。

池の水面に映った犬山城です。

 

 旧統一教会が日本で莫大な献金を集め続けていることが話題になっています。下の記事はGOOニュースの記事からの引用です。「献金のシステム」がまとめられています。

 

全国霊感商法対策弁護士連絡会 山口広弁護士
「あなたはお父さんお母さんの愛の結晶として生まれました。お父さんお母さんもそのお父さんお母さんから生まれました。私たちのご先祖は扇のように広がり、沢山のご先祖の中から今あなたがいる。では、そのご先祖たちの行いと私たちのこれからの運勢はどうなるのか・・・。人のために生きていい人生を歩んだご先祖が沢山いる方は幸せに恵まれる。財産や様々な幸運に恵まれる。しかしながら自分のために生きてしまった悪霊がご先祖に沢山いる方々は色々な不幸に見舞われることが多いといわれています。私たちは、十月十日お母さんのお腹にいる時は、地上生活の準備期間です。そして地上生活の80年間は肉体と心があります。心と体が一緒になって育っていくわけです。そして死ぬとどうなるか、肉体は土に還りますが、心は、これを霊人体と言いますが、心の体が永遠に霊界で生活していくんです。肉体は80年で滅びるが、霊界は永遠なんです。霊界は3層に分かれています。一つは天国。これは義人聖人が入る世界。次に中間霊界、為に生きた人が入る世界です。では私たちのご先祖が、例えば財産の怨念、色情の怨念、あるいは殺傷の怨念、これを抱えて亡くなった方々はどうなるかというと、永遠に地獄の蓋の下で苦しみ続けるんです。その永遠に苦しんでいるご先祖たちは「助けてくれ」と地上の私たちに合図を送る・・・」

と説教は延々と続き、じゃぁどうしたらいいのかというと、「お祈りをしてきます」。様々な先生がお祈りから戻って、何を言うかと思うと「4500万・3500万・2100万、この3つの数字から何を選びますか?」つまりあなたの真心を持っている財産の中から天に捧げてください。それでご先祖さまが救えるんです・・・となるという。

ここで救う先祖とは7代前まで遡る。7代前までのご先祖の解怨をする。この「先祖解怨」が旧統一教会献金システムになっている。「怨みを解いてあげる」というのも旧統一教会の手口のキーワードなのだが、驚くのは、世界の旧統一教会のすべての献金の7割から8割近くが日本人の信者からのものだという。これは単に日本人に熱心な信者が多いとか、経済力があるということではない。」

 

 自分の人生に起きるさまざまな「不幸や不都合」を祖先からの怨みのサイン・・・と説明するというのは、興味深いことです。この「システム」については、50年前の原理研が話題になっていたころにすでに、その基本的なデザインが出来上がっていたようです。

 私たち浄土教の信徒にとっては、祖先の「怨」など問題になりようがありません。極楽には怨みも怒りもありません。煩悩が生み出すそのような苦しみは、極楽には存在しないからです。

 祖先を供養するのは、祖先の作った問題を解決するためではありません。自分になにか不都合があるからといって、それを祖先からの「怨みのシグナル」とか責任転嫁せず、問題の原因を追究し、まず自分を顧みるのが仏教徒の生き方です。

 生きているうちに仏の教えに出会い、極楽へ赴いたのちは阿弥陀仏のお説教を直接聞いて、慈悲の心を養い、菩薩となって利他の修行を続けるのが理想です。

 

 まあ、正直言って、屋根の雨漏りをなんとかしたい今の慈雲寺住職としては、脅して資金調達ができるものなら、なりふりかまわず・・・・あ、さすがにそれはないなぁ。宗教者としては脅しで献金を集めるのは最悪だ。しかし・・・・現実はなぁ。

 例えば、ひと昔(昔か?)前に話題になった水子供養。何らかの理由で子供を失わなければならなかった母親の罪の意識に付け入るようなところが否定できません。もちろん、供養することによって、悩みが薄れ、素直に現実に向き合えるようになった人も多いでしょう。ペット供養にも似たところがあるかも?

 

 どの宗教も「献金」や「布施」によって支えらえています。屋根の修理などの目的がある場合にはなおさらです。それと今回の統一教会の集金システムとの違いがどこにあり、どう対応していくのか、もう少し考えてみたいと思います。