大乗仏教における「菩薩」とは、出家・在家問わず、お釈迦さまの教えを慕い、慈悲行を実践するすべての仏教徒を指す言葉です。
しかし、膨大な数の菩薩の中でも、特に修行がすすみ、大いなる慈悲の力で人々を救おうとする方々がいらっしゃいます。密教で重要な役割を果たしている普賢菩薩や、お釈迦さまの入滅から56億7千万年後に、仏(弥勒仏)として出現することが決まっているという弥勒菩薩、地獄まで降りてまで私たちを救おうとして下さる地蔵菩薩など、さまざまな"スター”の菩薩さまがおいでになります。なかでも、もっとも私たちに近しく、日々の生きる苦しみをあらゆる手段を使って救って下さろうと大活躍しておられるのが観音菩薩です。
観音菩薩は、観世音菩薩または観自在菩薩の略語で、「世のできごとを自在に見通す」という意味のサンスクリット語Avalokiteśvaraの漢訳です。
浄土教においては、阿弥陀仏の慈悲の働きを顕現する菩薩とされています。『法華経』の観世音菩薩普門品には、救いを求める人々の願いに応じた姿で出現すると説かれています。時には王様、ときにはバラモン僧など、さまざです。もしかしたら、今日あなたを手助けしてくれたのが観音さまの化身だったかも?!
このさまざまな変化身を「三十三観音」と総称しています。西国観音巡礼が三十三カ所霊場とされているのはこのためです。
変化観音
観音さまはたくさんの変化身がありますが、なかでも有名なのが「六観音」と称されるお姿です。
基本となるのは「聖観音」。美しい飾りや衣を身に纏った人間のおすがたです。一方、千手観音(千手千眼観音)は、全身にたくさんの手と眼を持ち、私たちの苦しみのすべてを見通し、その種類によってさまざまな手段で救いの手を差し伸べて下さっているお姿です。日本では四十二本の腕と二十七の面で「無数」を象徴している観音像が多いですが、中国には千本の手がぎっしり背中から出ている観音像が普通のようです。
この他に十一面観音、如意輪観音、准胝観音、馬頭観音などが六観音として知られています。天台宗では、准胝観音ではなく、不空羂索観音を六観音に入れているようです。私は、苦しみの荒波におぼれそうになっている人間を救助ロープを投げて助けてくれようとしているカウボーイのような不空羂索観音の大ファンです。