慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

4月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、4月21日(日)10時より行います。テーマは「法然上人がひらいた『浄土門』とは何か。Part 3 」です。法然上人の弟子、弁長、親鸞、証空が、師の教えをどのように受け止めていたのかをご一緒に学びましょう。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

宗教的な「食の禁忌」を考える

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 ニュースを見ていたら、興味深い記事が出ていました。デンマークのラナースという市で、市議会が「デンマークの食文化を学ぶため、給食に豚肉を使え」という条例を可決したとのことです。

 デンマークはヨーロッパの中でも豚肉の名物料理が多いところです。日本にもデンマークの豚肉はたくさん輸入されているそうです。私は雑誌の取材で自転車でデンマークを走るという経験をしました。屋台で豚肉の脂身をカラカラに揚げた、なんとも健康に悪そうな、だけどおいしいものを食べた思い出があります。

 さて、この条例が極右政党として知られるデンマーク国民党の発議で市議会に掛けられたというところが問題なようです。日本の給食に「もっとお米を」というのとはどうやら違う。

 つまり、デンマークでも最近イスラム教徒の移民が増えているのですが、イスラム教徒は宗教上の理由で豚肉を食することが禁じられています。このデンマーク国民党の意図はイスラム教徒への嫌がらせでは?というのです。この条例がどんな影響を及ぼすのか続報が気になります。

 日本では宗教上の理由で一定の食べ物を食べないという禁忌について、かなり緩やかな態度をとっています。仏教徒も五戒で飲酒は禁じられているのに、僧侶ですらお酒を平気で飲んでいますよね。

 イスラム教徒が豚肉の禁忌があるように、ヒンズー教徒は牛を食べません。甲殻類が禁じられている宗教もあるし、コーヒーなどカフェインを禁じられている宗教もあります。

 これから増々日本にやってくる外国人は多くなるでしょうし、日本人でも厳しく宗教的禁忌を守ろうとする人もいるでしょう。「少しならいいだろう」とか「客の方が勧めているのだから受けるのが礼儀だ」などと、日本人にありがちな「ゆるやかさ」を他の人に押し付けないように気を使うべきでしょう。

 宗教は人格を形成する文化そのものです。相手を理解し、コミュニケーションを取ろうとするとき、宗教的な禁忌に触れないように気遣うのは、礼儀の第一歩でもあります。同じように、私たちの文化で禁忌とされていることをそれを知らない人にきちんと説明する努力も必要でしょう。

◎今日の写真は、カナダの首都オタワにある国立人類学博物館で見た、ビーバーをかたどった彫刻です。このタイプの大型の彫刻は部族の有力者が亡くなったとき、遺骸を納めた箱を載せる台として使われます。