先日、江戸時代後期に活躍した念仏者、徳本上人の歴史や教えをたどる展覧会を西宮市の郷土資料館まで見学に行きました。
徳本上人は18世紀の終わりから19世紀の初頭にかけて、和歌山から近畿、江戸まで、各地で熱狂的な信者を多数集めた念仏行者です。
上の写真は、徳本上人が独特のスタイルで書いた南無阿弥陀仏のお名号です。この名号を彫った石碑は全国に1000塔以上あり、その影響力の大きさが偲ばれます。
私は恥ずかしながら、つい最近までこの念仏行者のことを知らなかったのですが、旅行読売の取材で和歌山市のあるお寺を取材に行ったとき、徳本名号の石碑を見てびっくりしたのです。なんだか妙に迫力があって、不思議な書体です。
それから、和歌山の南部へお説教に行くと、そのお寺に徳本上人の書が残されていたり、平等院へ行くと宝物館で徳本上人ゆかりの品が展示されていたりと、あちこちでご縁ができてくるから不思議です。
徳本上人は、大きな木魚をガンガン叩きながら、大声でお念仏を続けたとか・・・押し合いながら称和していた群衆の中には失神するものもいたそうです。
徳本上人は、現世利益のパワーを示しながら人々を導きました。病気を治したり、怨霊を鎮めたり、自殺者を回向したら、その池では二度と自殺者が出なくなった、などなど・・・なんともパワフルです。とりわけ、きっぱりと女性もそのまま往生できると説いたことから、女性信者も急増したそうです。
西宮の展示品の中には、上人の爪や髪の毛まで、信者が大切にしてきたことを示す資料がありました。
徳本上人のお念仏の理解は、念仏をできるだけたくさん称えることを重視しています。私が信じ、学んでいる法然上人から証空上人へ受け継がれた教えとは大きく違うものではありますが、そのパワーと布教の巧みさにはとても興味があります。
西宮の展示は小さなものでしたが、徳本上人の足跡を丁寧に追ったもので、遠くまで出かけた甲斐が十分にあったと思いました。