私は25年前に僧侶になりましたが、1975年から今年、慈雲寺の住職に着任するまで、ほとんどの年月をカナダで暮らしていました。ですから、日本でお寺とみなさんがどのように日頃御縁を結んでいるのか(おつきあいしているのか)、実際のところはわかっていませんでした。
日本に戻って毎日いろいろなことに驚いてばかりの日々が今も続いています。このブログのタイトルを「おろおろ日記」としたのはそのためです。
その「驚いたこと」の一つがお布施でした。多くの方が、どうもお布施を「お坊さんにお経などを読んでもらうときの料金」と考えておいでのようなのです。「お布施はどのぐらい差し上げたらよいですか?」と聞かれたときには、本当におろおろしてしまいました。それで、先日催した第一回の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」のテーマに「布施」をとりあげたのです。お伝えしたいことが山ほどあって、うまくお話しできなかったようですので、このブログで少しずつお話ししていきたいと思います。
布施は、けして「お坊さんの行為(読経や儀式、戒名など)の料金」ではありません。穏やかで安心に満ちた暮らしをおくるための仏教徒としての「修行」の一つなのです。ですから、僧侶である私にとっても布施は大切な修行です。僧侶は仏教の教えをできるだけ多くの人々にお伝えし、人々が苦しみの少ない暮らしをおくれるようにお手伝いするのが「役割」です。これを「法施」といいます。「法」とはお釈迦様が説いた仏教の真理のことです。これを皆様に布施していくことを「ライフスタイル」として選んだものが僧侶なのです。
僧侶は「仕事」ではありません。ですから「対価」も「料金」も発生しないのです。
●今日の写真
カナダのケベック州に広がるロレンシャン高原の紅葉です。カナダの紅葉は9月下旬から10月中旬が見ごろです。