慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

4月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、4月21日(日)10時より行います。テーマは「法然上人がひらいた『浄土門』とは何か。Part 3 」です。法然上人の弟子、弁長、親鸞、証空が、師の教えをどのように受け止めていたのかをご一緒に学びましょう。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

女性の出家の機会をもっと広く! Part 1

  このブログは、主に慈雲寺で行われる行事のお知らせについて書いています。もう一つのテーマは、「女性の出家」です。このテーマについては、年に数回まとめて書き込んでいます。内容は毎回、ほとんど変わらないのですが、今、女性の出家希望者をかこむ状況に変化が出るまで、こつこつと繰り返していこうと思っています。

 

 現在の出家者は、自分で発心して道を求めるのではなく、親や親戚が僧侶だったので、「跡継ぎ」として出家したという例が多いようです。お寺の住職は、自分の子供を弟子に取り、跡継ぎにしていくのです。

 弟子を育てるのは僧侶の重要な役割の一つです。多くの弟子を育て、その中から最もふさわしい弟子にお寺を継がせていくというのが本来の姿です。浄土真宗などの特別な例をのぞいて、寺院は個人の所有物ではなく、「自分の子供に継がせるのが理想」というのは正しいありようではないでしょう。

 寺院の関係者以外の人が出家しようとすると、この第一歩で壁にぶつかってしまうのです。なぜなら、出家をするためには、師僧になってくれる人、つまり「弟子にしてあげる」と言ってくれる僧侶を見つける必要があるのです。

 一人の弟子を取るということは、人の人生に重い責任を負うことです。精神的にも大きな負担ですが、経済的にも負担が必要です。例えば、得度式と呼ばれる、修行僧になる第一歩の式ですが、衣の用意など、経費の全ては師僧の負担です。僧侶の資格を得るための教育機関や修行道場の費用も師僧の負担です。

 息子をお寺の跡継ぎにしていく「経費」と考えれば・・・・それほど大きな負担ではないでしょうが、「姻戚関係者でない人」を弟子に取るのは躊躇する僧侶が多いのも、残念ながら、ある意味当然でしょう。「投資に見合う結果が欲しい」というのは、僧侶として恥ずかしいことではありますが、現実はシビアです。

 女性の場合は、さらに難しくなります。男性の僧侶が女性を弟子に取るというのは、よけいな「配慮」が必要になる場合が想定できるからです。

 となると、女性が出家を希望する場合は、尼僧に師僧になってもらえるようにするのが理想ということになります。中部地方には、かつて尼僧寺院がたくさんありました。しかし、現在尼僧寺院はどんどん減っています。寺院は残っても、男僧が住職をしている場合も少なくありません。

 なぜ、尼僧寺院は少なくなっているのでしょう?理由はたくさんありますが、私が考える大きな理由の一つは「介護」です。現在の尼僧寺院の住職の多くは70代後半から80代。介護問題はどの寺院にとっても現実です。

 現住職は、とても苦労して先代に仕え、介護し、お寺を受け継いだという人が少なくありません。「自分は苦労したので、弟子には個人的な介護などはさせたくない」と考えるか、「私が苦労して受け継いだこの寺を譲るのだから、介護は当然」と考えるかが微妙。

 弟子を取るときも、この「介護」が大きなポイントになってしまっては、本当に仏教に志している女性が第一歩で躓いてしまうのではと危惧しています。