慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

4月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、4月21日(日)10時より行います。テーマは「法然上人がひらいた『浄土門』とは何か。Part 3 」です。法然上人の弟子、弁長、親鸞、証空が、師の教えをどのように受け止めていたのかをご一緒に学びましょう。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

師僧の十三回忌で和歌山へ

 

 私に出家のきっかけを作って下さったのは、浄土宗西山派西山浄土宗)で最も優れた説教師の一人として知られていた橋本随暢上人です。

 随暢上人は数多くの弟子を育てたことでも知られていて、私は彼の13番目の弟子です。私の後にも弟子は増えていたので、結局20人以上の男女を出家させて下さったことになります。

 一口に20人と言っても、弟子を育てるというのは精神的にも、時間的にも、経済的にも大きなエネルギーを必要とします。私も自分で弟子を持つまで、随暢上人の偉大さに、本当の意味で気が付かなかったと言わざるを得ません。本当に申し訳ない気持ちです。

 その師僧が遷化されてから、今年で十三回忌を迎えました。先日、師僧のお寺のある和歌山県の南部へ法事に参列するために出かけました。

 家族、直弟子、法類の僧侶たち、そして総代さんなどの関係者が集まりました。法要後の食事会では、随暢上人の思い出話に花が咲いて、本当に楽しかった。

 兄弟弟子というのは、なんとも言えない特別の親しみがあります。小坊主時代に短期間ではありますが、住み込んでいたお寺ですから、なんだか実家に帰って、兄弟に再会したような気分でした。

 法事というのは、確かに準備をする家族の負担は少なくないでしょう。しかし、故人が作ってくれた縁に結ばれた人たちが集まって、思い出を話すというのは、特別な意味のあることです。自分がどこから来たのか・・・ということを再確認する機会でもあるようです。

 随暢上人は、説教師として優れていたのはもちろんですが、なんとも言えないチャーミングなところのある方でした。その「愛らしさ」は、説教を聞く人々の心に教えをとどける大きな力になったと思います。

 そして、少し「変わり者」でもありました。その変人さのお陰で、私は拾われたのだと思います。随暢上人が作って下さった「仏への道」をこれからも少しずつ少しずつでも進んでいきたいと思いながら、和歌山の美しい海を眺めていました。