慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

12月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、12月15日(日)10時より行います。テーマは、「『一枚起請文』に学ぶ法然上人の教え」です。どなたでも歓迎いたします。」お気軽にご参加ください。

弟子の得度式に臨んで  女性の出家について(その3)

 慈雲寺の属する浄土宗西山派西山浄土宗)の総本山は京都の西山の麓、長岡京市にある光明寺です。法然上人の御遺骸が荼毘に付された場所で、以来、上人の御遺骨をおさめた御本廟をお護りしているお寺です。

 ここで毎年7月に得度式が行われます。得度式は出家を志す人が最初に受ける儀式で、これにより、沙弥となって修行を始めることになります。

 得度式は本来、師となる僧侶から「戒」を授かり、弟子になることから始めるのですが、本山で、御法主より直接受戒できることは特別な意味があると思っています。

 今年、この得度式に慈雲寺から二人の方が参加しました。出家を志す女性たちです。得度式を終えたら、私の弟子、慈雲寺の沙弥となって修行を始めることになります。

 夏真っ盛りをいう強い陽射しの照り付ける日、弟子が得度する姿を眺めるのは、私にとっても深い感動を呼ぶことでした。今、西山浄土宗の御法主(管長)は沢田教英上人。初の女性管長です。伝統的は仏教宗派の中で、浄土真宗に数人の例外はありますが、女性がトップに立つことは稀有と言って良いでしょう。

 浄土真宗では「戒」を授けることはないので、女性の法主から女性の得度希望者が「戒」を授けられるという例は、他にないものと思われます。正に歴史的な瞬間でした。

 しかし、正直言うと、私がそのことに気が付いたのは、式の後になってのことでした。式は荘厳でいながら、穏やかで、阿弥陀仏のお慈悲が堂内に満ちていましたから、あまり「歴史的瞬間」などと意気込む感じではなかったからでしょう。

 得度式に臨んでくれた二人は、両者とも、毎月慈雲寺で行われている「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」を聞きに来て下さっている方でした。法話を何度か聞くうちに、出家をを考えて下さったそうです。

 お二人とも、前回のブログに書いたような「突破の人」ではありませんでした。動機はしっかりした意思を感じさせるものでしたが、落ち着いて、ゆっくり仏教徒としての生き方を学んで行こうという姿勢の見える方々です。

 得度式は入り口に過ぎません。これから僧侶となるためには幾つもの段階、修行を重ねなければなりません。私も師僧として、彼女たちの成長を見守り、できるだけの手助けをさせて貰わねばと思っています。成長すべきなのは「師僧」としての私なのだと心を引き締めています。