慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

5月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」5月26日10時より行います。テーマは「御祈祷、お守り、お札とは何か」です。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

「突破の人」は出家に向かない? 女性の出家について(その2)

  今日は広島に原爆が投下されてから78年目です。今朝の中日新聞の一面の見出しは「被爆の実相どう伝える」でした。広島は今日のように暑い日だったのでしょうか?

犠牲者の方を静かに偲んで、一日を過ごしました。

 

 さて、出家のお話を続けましょう。 このブログを開設した理由は、慈雲寺の行事について皆様に知っていただきたかったからです。しかし、もう一つの大きな理由は、尼僧としての私の生活のあれこれを書くことによって、出家を考えている女性への応援メッセージとしたかったのです。

 女性僧侶のブログというのは他にあまり例がないらしく(ブログをする人自体が少ない?)、「尼僧、出家、尼寺」などといったキーワードを入力すると、このブログが検索エンジンの一番上に出てきたりします。

 そのせいか、慈雲寺に突然現れて、「出家したい!」と深刻な面持ちでおっしゃる方が時々いらっしゃるようになりました。

 私は女性の出家を応援することが、私の大事な役割と考えているので、「出家したい」と言う方には、さまざまな方法でサポートして差し上げたいと願っています。

 しかし、実際に突然現れる方を目の前にすると、正直、呆然としてしまうことが多々ありました。

 失礼なことかもしれませんが、私はそんな方を「突破の人」と呼んでいました。

 突破の人は、「なぜ出家したいのか?」という問いや、「出家をして尼僧になると、どのようなことが起きると予想していますか?」という問いに、ほとんど答えてくれません。

 出家をすることで「何か」が大きく変わることを過剰に期待しているだけで、事前に何かの見当をつけているわけではないようです。

 留学、結婚、移住、転職など、何かを切っ掛けにして、現状を一挙に突破したいと考えることが良くあります。人生のリセットを求めているのでしょう。

 そんな時、「出家」は最もパワフルな突破口に見えるのではないでしょうか?現状の生活を一挙に捨てて、完全リセット・・・というのが出家のイメージなのではと思います。

 しかし、実際に出家の道を歩み始めると、現状を突破して一挙に「新しい私」や「本当の私」に出会えるわけではないことは直ぐにわかるはずです。

 出家は、ゆっくりと仏教徒として生きていく「縁」を育んでいくプロセスです。現状の一挙転換を求める人は、出家にはむしろ向いていないのではないかと思ってしまいます。もちろん、厳しい修行を課せられる宗派で出家すれば、しのごの考える余裕も与えられないでしょうから、突破できる可能性もあるのかもしれませんが・・・少なくとも、浄土宗西山派の僧侶に求められているものとは違うと思うのです。(つづく)