慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

4月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、4月21日(日)10時より行います。テーマは「法然上人がひらいた『浄土門』とは何か。Part 3 」です。法然上人の弟子、弁長、親鸞、証空が、師の教えをどのように受け止めていたのかをご一緒に学びましょう。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

カナダに残務整理に行ってきました Part1

 しばらく更新をしなかったので、また友人から心配の連絡がありました。実は、残務整理をしにカナダのバンクーバーに行っていました。

 私は大学を出てすぐにカナダに渡り、そのまま慈雲寺に赴任するまでの約40年間をカナダで過ごしていました。その間、しばらく日本に滞在したり、北米各地に取材に出たりしてはいたのですが、自分の気持ちとしては「カナダ在住」という感じでした。

 永住権は持っていたのですが、国籍にはこだわりがあり、安易にカナダ国籍になることはできないと悩み続けていました。僧侶となってからは、いずれどこかのお寺の住職になるだろうと思っていたので、日本に戻ることは「一択」と考えるようになりました。

 慈雲寺の先代さまは「私は死ぬまで住職でいるので、葬式に帰ってきて後を継いでくれればよい」とおっしゃっていたので、慈雲寺の弟子にしていただいてからも、そのままカナダで暮らしていました。

 先代様が急病で御遷化なさったのが9年前。カナダでの暮らしの何もかもを放り出して慈雲寺に赴任してきました。

 以来、カナダのことは基本放置。知人や友人に面倒なことを押し付けたままでした。当然、いろいろな所に無理が出てきて、多くの人に迷惑や心配をかけることになってしまっていました。

 きちんと残務整理に行かなければと思いながら、コロナの問題もあったりして先延ばし、先延ばしを繰り返していました。

 一つは、カナダに入国するには永住権の放棄手続きをしなければならなかったという問題です。もう慈雲寺の住職になったのですから、カナダへ戻ることはない。したがって永住権の放棄は当然のことなのですが、手続きをしようと思うたびに何か問題がおきて先送りしていました。心の奥で嫌がっている自分がいたのです。

 

 仏教では、状況をありのままに「観る」(みる)ことの重要さを繰り返し説いています。現状をしっかり見つめ、選択肢の有無を見極め、最善の判断をする智慧を養うのが大切な修行です。

 選択肢が限られているなら、その中で最善で、しかも現実的なものを選ぶ・・・これができないのは、私の中にある煩悩、不用な執着です。

 カナダのことを考える度に、私は鬱々とした気持ちになっていました。選択すべき道は明らかなのに、愚図愚図とこだわっていたのです(づつく)