慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

4月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、4月21日(日)10時より行います。テーマは「法然上人がひらいた『浄土門』とは何か。Part 3 」です。法然上人の弟子、弁長、親鸞、証空が、師の教えをどのように受け止めていたのかをご一緒に学びましょう。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

お盆のお参りの準備を僧侶の側から見ると

 

 慈雲寺の周辺では、8月の13~15日が「お盆」として認識されているようですが、帰省する側の都合などもあるのか8月に入ると「お盆のお参りをお願いします」というお声がけを戴くようになりました。

 慈雲寺には伝統的な意味での「檀家」はないので、このような形でご縁が深まるのはとても嬉しく、ありがたいことです。

 先日、本堂でお盆のお参りをさせていただいたお宅の方から、「来年は自宅でお願いしたいと思いますが、何か準備のアドバイスをいただけたら・・・」というご質問を受けましたので、幾つか書いてみようと思います。

 

お盆の準備

1)お墓や仏壇周辺の掃除

 お盆の準備としては、まずお掃除です。お墓の周辺は雑草を抜き、墓石を磨きましょう。

 仏壇は、まず仏壇周辺に置いて有る物の整理です。お参りに伺うと、きれいに積み重ねてあるのですが、仏壇の周辺に古いお線香やろうそくなどが山積むになっているお宅があります。

 最小限の物以外は仏壇の中や他の場所に保管し、仏壇の周辺はできるだけすっきりさせて起きましょう。もし、保管しきれないお線香や蝋燭などがありましたら、日頃おつきあいをしているお寺に「引き取ってもらえませんか?」と伺ってみてはいかがでしょう?もちろん、寺院によっては決まったブランドのお線香や蝋燭を使うところも多いので、「いりません」と言われてしまうかもしれませんが・・・・・・少なくとも、慈雲寺では大歓迎。古いお線香でも、暑さで変形してしまった蝋燭でも大歓迎です!

 

2)お位牌と過去帳

 それぞれの地域で慣習は違うでしょうが、慈雲寺の周辺では、仏壇の中のお位牌を全部前に出し、お参りに来た僧侶に戒名を読み上げて供養してもらいやすく並べるお家が多いようです。

 僧侶の側からすると、お位牌は文字が薄れているものも多く、できれば各家の「過去帳」を用意していただけるとありがたいです。

 過去帳は先祖の戒名、俗名や命日などを記したもので、菩提寺の住職に書いていただくのが普通ですが、普通の紙やノートに書き出しておいてもかまいません。ノートに書き出す場合は、それぞれのご先祖の個人的な情報なども書き込んでおくと、やがて「宝物」になっていくはずです。

 そのさい、忘れてならないのは戒名の読み方です。仏教的な特別な読み方をする場合もありますので、思い出せる限りふりがなをつけておくと良いでしょう。もし読めないものがあったら、ご縁のあるお寺の方にご相談下さい。

 

3)精霊棚(盆棚)の飾り方

 精霊棚に何を御供えするかは、その地方や家によって伝統が違います。

精霊棚の御供えものや飾り方

 ネットで検索すると上のようなイラストが出てきますが、慈雲寺周辺の必須アイテムであるスイカが出ていません。ご近所のお寺やお年寄りなどに聞いてみるのがおすすめですが、基本的には季節の野菜とお菓子、故人の好きだった物を御供えすれば良いでしょう。

 

4)ご先祖と共に過ごす「お盆」

 民俗学者の方々の本を読むと、お盆は仏教だけの慣習ではなく、古代からある日本人の祖先感や死後の世界観などを反映したものだとあります。

 浄土教の教えでは、亡くなった方は極楽に迎え取られており、菩薩の修行を始めています。菩薩は神通力がありますから、どこへでも自由に行き来できます。

 お盆に限らず、いつでもどこでも、伴侶や子孫、知人の思いのあるときは、そこに戻ってくることができるのです。

 ではなぜお盆が特別なのかと言えば、たくさんの縁者が集い、祖先をまるで生きて居るときのように迎えることに意味があるのです。

 精霊棚も、飾り付けをするだけではなく、それを中心に皆が集まって食事や会話を楽しむことに意味があるのです。

 お盆の間は、食事をするときにも祖先の席を作り、ぜひ一緒に食事を楽しんでください。

 

 何千、何万もの祖先の命・思いを受け継いで今の自分があることを改めて味わい、感謝して過ごしましょう。