慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

5月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」5月26日10時より行います。テーマは「御祈祷、お守り、お札とは何か」です。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

今日の読書 = 『河北新報の一番長い日』

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  慈雲寺の山門に本箱を置き、小さな「慈雲寺文庫」を開設してから数カ月たちました。気に入った本は持って帰っても良いし、読み終わったら返してくれても良いし、交換しても良いし・・・という何でもありのシステム。「寄付も歓迎」というポスターを貼ったら、いつの間にか本が増えています。

 困ったことに、私が読みたくなるような本が多くて、「まず私が読んでから本棚い入れよう」などと勝手なことをしています。そのうちの一つが、今日一気に読んでしまった『河北新報の一番長い日』です。この本は東日本大震災の時、東北を代表する地方紙である河北新報の記者たち、編集者たち、そして新聞の印刷を行う人たちや会社の役員たちが、あの極限の状況でどのように報道し、どのように新聞を発行し続けたかという本です。抑えた筆調で書かれているのが、かえって緊迫した状況をリアルに伝えていて、ドキュメンタリーとして秀逸な本だと思います。

 

 お行儀が悪いことはわかっているのですが、私は一人で食事するときについ本を読んでしまいます。レストランで食事をするときにも我慢できないことがあるので、できるだけ目立たない席に座ります。

 今日も、取材途中のランチの時に、この本を読み始めたのですが、数ページを読み始めただけで涙がぽろぽろと出てきてしまいました。ハンバーグを食べながら泣いていた謎のおばあさんになってしまったわけです。

 超ローカルとは言え、私も今は新聞記者の端くれ(のさらに末端ですが)・・・・現在のコロナの問題を含め、不測の事態が起きたときに、私は記者(+僧侶)として何ができるでしょうか?どう動けばよいのでしょう?私に、河北新報の記者たちのような覚悟はあるのでしょうか?

 実は河北新報には、私は特別の思いがあります。大学3年になって、いよいよ就職のことを考えるようになったとき、大学は紛争の真っ最中で校舎は封鎖。就活(そんな言葉はまだありませんでしたが・・・)に走り回れる雰囲気でもありませんでした。私は同じ学部で大学院に進むか、別の学部に学士入学するか、ともかく学生生活を延長しようと思い、学費をためるためにアルバイトに励んでいました。

 そんな時、唯一気になったのが、この「河北新報社」の求人広告でした。採用される可能性は限りなくゼロに近かったでしょうが、もし入社していたら、震災の時にはきっとまだ記者か編集者として働いていたことでしょう。

 

 ライターとしての最後で(突然小説が書きたくなったりしない限り・・・)、ローカル新聞の記者に戻れたのも不思議なご縁だし、ありがたいことだなと思った一日でした。

7月の慈雲寺の行事予定

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 メダカの鉢に浮かべた布袋葵が次々に咲いています。朝、メダカに餌をやろうと庭へ出ると、美しい花が迎えてくれます。嬉しいですが、太陽が高くなって気温が上がるとすぐにしぼんでしまいます。哀れな花ですが、葉の方はすごく元気で、どんどん増えていきます。時々分離してやらないと水面を覆いつくしてしまいそうです。花の哀れさと、このパワフルな繁殖力とのコントラストが何だか不思議。

 さて、夏本番になる7月の慈雲寺の行事予定です。ソーシャルディスタンスを考えて椅子を配置し、入口には除菌ジェルを置きます。飲み物のコップも紙コップを使用します。

1)7月6日(月曜日) 夜7時半から 満月写経・写仏の会

 慈雲寺の本堂では、いつでも写経や写仏をしていただけるように用意がしてあります。必要なものは全て揃っていますので、お気軽においでください。

 毎月、満月の夜はお月見を兼ねた写経・写仏の会をしています。7時半から、皆で『般若心経』の読誦をし、お経の内容についても少しづつ学んでいきます。

 早めにいらしても結構ですし、7時半に間に合わなくても慌てずにおいで下さい。初心者の方も歓迎いたしますので、お気軽にご参加ください。

 

2)7月26日(日曜日)10時より 尼僧と学ぶやさしい仏教講座

 身近な話題を取り上げて、仏教というものの見方、考え方の基本をご一緒に考えてみませんか?「講座」という名前はついていますが、どなたでもお気軽にご参加いただける内容です。宗派にかかわらず、どなたでも歓迎いたします。

 7月のテーマは「ウィズコロナ時代の先祖供養とお盆の意義」です。

 急激に変化した社会の中で、私たちはどのように暮らしていけば良いのでしょう。心の安定と現状に静かに向き合う勇気を仏教は教えています。この夏、お盆をきっかけに、先祖と私たちとのつながりを改めて考えてみましょう。

 

3)毎朝7時半より、『般若心経』の読誦を中心にした、短い勤行をいたします。

 一日のスタートに変化を加えてみませんか?どなたでも歓迎いたしますので、お気軽にご参加下さい。

 

◎慈雲寺の行事は、特別な場合を除いて全て無料です。ご先祖の御供養やお寺の維持のために、お気持ちを御喜捨いただければ有難く存じます。

◎慈雲寺では、宗派にかかわらず、さまざまなご相談に応じます。ご遠慮なくお声がけ下さい。

 電話052-621-4045

 

 

 

ゆっくり考える・・・が仏教の基本

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 中日新聞に私のエッセイが掲載されてから2カ月たちます。今も時々、「新聞を読みました」と言って下さる方がいて、恥ずかしいやら嬉しいやら・・・・ライターの喜びは、読者の心にほんの一言でも残る文章が書けたら・・・ということに尽きるからです。

 お手紙やお葉書も何通かいただきました。すぐにお礼のお返事を出すべきところですが、なかなか思うように進みません。このブログをご覧の方がいらっしゃいましたら、少しずつお返事を書かせていただいていますので、どうぞ失礼をお許しくださいませ。

 さて、そのお手紙の中で、一人だけとても気になる方がいます。文面から何とも言えない興奮が伝わってくるのです。熱意というべきかもしれません。私の文章のどこに、このエネルギーを引き出す要素があったのかと、少し不思議になりました。

 

 宗教は、しばしば「熱狂的」な状態で信仰と出会うような仕組みになっていることがあります。奇跡に出会う、熱狂的な祈りで病気が治る、巨大な宗教施設に圧倒されるなどなど、さまざまな「仕組み」があります。カリスマ性の高い教祖が、大勢の人を集団ヒステリーのような状況を作り出し、集団で宗教的な法悦に浸る・・・などということもあるでしょう。

 しかし、仏教の基本は「一人で考える」です。お釈迦様は「法(真理)は示されている。あとは法を拠り所としてサイの角のように一人で進め」とおっしゃっています。

 熱狂的な信仰は確かに心地良いこともあるでしょう。しかし、一人でゆっくり考えてみるのがおすすめです。キーワードは「ゆっくり」です。

 アメリカのテレビなどで布教するキリスト教系の新興宗教の教祖たちは、まるで機関銃のように、そして燃えるような熱意で布教をします。しかし、お経の中のお釈迦様は、いつでゆっくりと話し、弟子たちに自分で考えるように励まします。

 言葉を発するときは、その言葉が自分と他人に及ぼす影響をしっかり考えながら話せとお釈迦様は教えています。そのように考えながら話せば、当然、話はゆっくりになって行くでしょう。

 手紙も同じです。熱い思い、はやる心を文章にぶつけ、自分の思いを吐露するだけでは、汚い表現ですが「感情の嘔吐」になりかねません。

 下書きを書いて、読み返し、一日ぐらいたってから清書するというのはどうでしょう?それでは「自分の思い」が伝わらないと思いますか?

 思いを伝えるときは、その影響を考えながら・・・とお釈迦様は教えて下さっています。

 

◎今日の写真は、慈雲寺の近くを流れる愛知用水です。この写真の場所はサイホンの原理を使って、水をさまざまな困難な条件を克服して運んで行くための設備の一つです。

乞食(こつじき)の暮らし

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 僧侶は本来、毎朝托鉢に出かけ、そこで供養していただいた食べ物を食べて一日を暮らします。托鉢で何もいただけなければそれまで・・・お釈迦様もそうして暮らしておいででした。

 一年のうちの暑くて雨の多い時期は、信者の方々が用意して下さった場所に留まって「安居」の時を過ごしますが、通常はお説法をしては次の場所に移る「遊行」の暮らしが基本です。お釈迦様もそうしておられた・・・

 今でも、禅宗の僧侶たちは修行の一つとして托鉢に出ますね。まあ、集めるのはお金のようですが・・・

 こんな風に僧侶はほんらい乞食(こつじき)、つまりその日の食を乞うて生きていくものなのです・・・まあ、お釈迦様の時代のは状況が大きく変わっていますから、そのままというわけにはいきませんね。

 しかし、さいきん慈雲寺の暮らしはまさに乞食状態です。あ、托鉢に出るわけではありませんが、皆さまがお供えして下さるもので、ほぼ暮らしている状態です。

 慈雲寺は名古屋市内にありますが、まだ周辺には畑や果樹園が残っています。専業農家でなくても、自分の家で食べるものは、自分の畑で作るという人も少なくありません。そんな方の中には、昔からの習慣で「初物はお寺にお供えさせてもらう」という方がいらっしゃるのです。

 ナスやキュウリ、トマト、そして私の大好きな桃・・・夏の恵を次々とお供えしていただき、私も仏様の御相伴にあずかっています。

 

 食べ物だけでなく、先日、「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」を再開したら、「人が集まるのに、庵主様のことだから除菌の用意もしていないだろう・・・」と考えた(?)方が除菌ジェルまでお供えして下さいました。

 いや、除菌ジェルは前日に思い出して、用意はしてあったのですが・・・来月の会の時に喜んで使わせていただきます。そういえば、マスクのお供えもあったなぁ・・・「あの庵主さんのことだから、チャッチャと入手するなんてことはできっこない」と思ったようです。

 隠しても隠し切れない間抜けぶりというのが、みんなに知られてしまうのも、あながち悪いことではなさそうです。

 

 さて、今日はお供えの人参と大根を生かして、何の料理を作りましょうか・・・

◎今日の写真は、慈雲寺の近くを通る旧東海道の有松周辺の家並みです。電柱を地下に埋めたせいで、まるで江戸時代です。私は30年ほど前に、東京から京都まで旧東海道を全部歩きました。そのお話はまた別の機会に・・・

 

「沖縄慰霊の日」に祈る

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 今日は「沖縄慰霊の日」です。上の写真はネットからお借りした沖縄戦の焼け野原の様子です。

 今朝は早朝から青空が広がって、強い日差しが輝いていました。戦争末期の沖縄も、灼熱の日々だったことでしょう。今朝の朝の勤行の時に、沖縄戦の戦死者の方々の菩提を祈らせていただきました。

 私は、沖縄へいくのにパスポートが必要だった時代を知っている世代です。戦争が終わってからも、沖縄は長く占領地として苦しんできました。その苦しみは「基地の島」として今も続いています。

 沖縄へ仕事で行ったときには、突然轟音をたてて米軍の戦闘機が頭上を飛んで行くのをしばしば見ました。

 

 仏教徒は、いかなる高邁な理由があろうとも戦争を肯定してはならないでしょう。戦争は、一部の人の利益のために、最も弱い人々を殺していく行為に他ならないからです。お釈迦様は、明確に「殺すな」、いかなる理由があろうと「殺すな」と戒めています。

 今日は、沖縄でいったい何が起き、その影響が今も続いていることを思いながら、静かに暮らしています。

おかげ様で「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」、ようやく再始動しました。

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 今日、三カ月ぶりに「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」を再開しました。ブログでお知らせしただけなので、どのくらいの方々がおいでになるのか予想がつきませんでしたが、なんと30人の方が聴きにきて下さいました。

 中には「待ち遠しかった」とおっしゃって下さる方もあって、なんだかとても嬉しかったし、皆さまに会えなかったことが、やはり寂しかったのだと思いました。

 入口には消毒用のジェルを置き、マスクをしたままお話させていただいたのですが、困ったのは座席です。

 ソーシャルディスタンスを確保して椅子を並べようと思うと、20人がせいぜいですね。来月はテーブルなどを移動して、もう少し余裕をもって椅子を並べられるように研究したいと思います。

 

◎7月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、7月26日(日)10時より行います。テーマは「先祖供養とお盆の意義」です。

 これからの状況の変化次第ですが、多くのお寺でお施餓鬼は僧侶だけで行うとか、お盆の棚経に行かないとか、今年おお盆は例年とは違う様相になることが予測されます。

そんな時だからこそ、原点にもどって、なぜ先祖供養をするのか、お盆とは何なのか、ご一緒にじっくり考えてみませんか?

 どなたでも歓迎いたしますので、お気軽にご参加ください。

◎今日の写真はカナダのバンクーバーにある州立ブリティッシュコロンビア大学の人類学博物館です。手前のトーテムポールは、一族やコミュニティの有力者の遺骨を祀るための特別なものです。

21日に「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」の再出発。アクセスのご案内

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21日10時より、「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」を再開いたします。

 テーマは「不安と仏教」です。仏教が、人生の苦しみや哀しみ、不安への向き合い方をどう教えているか、ご一緒に考えてみましょう。

 

「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、私が慈雲寺に赴任して半年ほどたった時から始めました。新型コロナの問題が広がるまで、一回も休むことなく続けることが出来ました。応援して下さる皆さまのおかげです。

 再開には、まだまだ不確定な要素もあり、最近2キロほど離れた場所で患者が発生したとのニュース(不確定です)もあって、私の気持ちも日々揺れ動いています。

 しかし、今月はネットでのお知らせだけにとどめ、少人数の方々においでいただくことから再開しようと思います。

 

 本堂は風が十分に通るようにいたします。また、椅子もできるだけ間隔をあけておきました。

 入口には消毒ジェルを用意しておきますので、手の消毒をしてお入り下さい。

 毎回、お話の後に茶話会をしていますが、まだ今月はやめておきましょう。ただし、水分補給のために冷たい麦茶と紙コップをご用意しておきます。

 いろいろと制約はありますが、また皆さまにお目にかかれるのを楽しみにいたしております。

◎初めての方も大歓迎。どなたでもお気軽にご参加ください。

◎慈雲寺へのアクセスについては、慈雲寺のホームページ jiunji.weebly.com をご覧ください。

◎今日の写真はカナダの西海岸、ブリティッシュコロンビア州北部で見たクジラです。