文科省の前事務次官、前川喜平さんが名古屋の公立中学で行った授業について、文科省が名古屋教育委員会に異例の問い合わせをした事件に、私は深い関心を持ってきました。幸い、私が購読している中日新聞はこの件を詳しく報道してきました。文科省からの質問に対する、名古屋市教育委員会の回答も全文掲載。とても興味深いものでした。その後も、関連記事が幾つか出ていましたが、先日、前川氏を招いた中学校の校長先生のインタビューが出ていました。
この上井靖さんは、三月末で定年退職なさったので、正確には「前校長」です。退職したから、お話しできるようになったのかもしれませんね。このインタビューの中で、上井さんは「当時、市教委が毅然とした対応をしたと感じ、その姿勢に勇気づけられた。」とありました。実は私も文科省への市教委の回答を読んで、かなりホッとしました。
上井さんのインタビューで一番印象的だったのは、事件が表面化した後、上井さんは生徒たちに「取材になったら正しいと思ったことを堂々と話せばいい。」と伝えたということでした。自分で考え、自分の意見を自分の言葉で言えることの大切さを教えてもらった生徒たちは、とても幸せだと思います。前川氏が伝えたという「生涯学び続ける力を身に着ける」というメッセージも、生徒たちの人生に大きな力になるはずです。
このブログに何度も書きましたが、母国語の能力を伸ばし、語彙を豊かにし、自分の意見を言える力をつけることが、何よりも大切だと思っています。母国語は文化であり、自己を形成する基本だからです。外国語はあくまでも道具。道具を上手に使いこなせるかどうかは、母国語による自己形成ができているかどうかにかかっています。
ですから、小学校で英会話などを教える時間があったら、もっと国語をしっかりやるべきです。自分の意見を述べる時間、討論のやりかたを学ぶ時間を増やすべきでしょう。自分の考えのない人が、いくら外国語を習っても豊かなコミュニケーションができるわけがありません。
前川氏の授業が、名古屋市にもたらした影響は、これからも長く続きそうです。
◎今日の写真はインドのタージマハールで見た飾り彫刻です。