慈雲寺新米庵主のおろおろ日記

5月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」5月26日10時より行います。テーマは「御祈祷、お守り、お札とは何か」です。どなたでも歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

「成仏」とはなんでしょう? Part1

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いつも鋭いコメントや、なかなか答えにくい質問をして、私を叱咤激励(?)して下さるももはなさんが、前回のブログに下のコメントをして下さいました。

「住職、またちょっと教えて下さい。 成仏って何? 仏教的には輪廻せず、仏界で暮らす事かも知れないないけど、 いつもそ生きてる者と楽しくやってる故人は良くないのですか? 」

 この質問は、仏教の本質にかかわる大切な質問です。「成仏」の解釈や、成仏への道筋についての説明のしかたは、宗派によってさまざまなので、一般的に答えるのは実は難しい。しかし、浄土系の「他力」+「極楽」の教えからすると、答えはとてもスッキリしています。すっきりのお答えはPart2で。

 その前に、仏教の基本的な考え方を押さえておきましょう。

 

 仏教は「成仏」すなわち、仏になることを目指す宗教です。

 すべての衆生は六道を繰り返し輪廻していきます。生まれては死に、死んでは六道のどこかの世界へまた生まれていくのです。

 しかし、仏教はどこに生まれても、そこに生きることは「苦」であるという認識が最も基本的な考えです。地獄に生まれてしまえばもちろんのことですが、天人に生まれてもやがて「天人五衰」と呼ばれる衰えがやってきます。

 

 悟りを開き、この輪廻転生の繰り返しから離れたのが「覚者」。悟りに目覚めた人、すなわち仏です。死ななければ「仏」になれないわけでもないし、死んだ人が全て「仏」になるわけでもありません。

 お釈迦様は自力で修行し、悟りを開かれました。そして、それぞれの人の能力や環境に合わせて、悟りへの道を8万4000種類も説かれたと言われています。

 六道の中で、仏の教えに直接触れることができるのは人間と天人だけ。今、私たちは有難いことに人間に生まれ、仏教に出会えうことができたのですから、悟りへの修行に邁進していくべきでしょう・・・・・

 というのが、自力で悟りを開くために日々修行を積んでいる方々の道筋です。

 お釈迦様の時代に生まれ合わせ、お釈迦さまから直接教えを聞いた人々は、その場で悟りを開いた人も少なくないとお経には説かれています。一度に500人の聴衆がその場で悟りを開いたこともあるそうです。

 しかし、お釈迦様が「人間」の肉体を離れ大涅槃に入られると、人間の能力も環境も次第に劣化していくというのが、仏教のもう一つの基本的な考え方です。

 現在、私たちは「末法」という時代に生きています。人間の能力、指導者としての僧侶の能力、環境、その全てが劣悪だと、仏教は考えます。そのような時代に生きる私たちは、自分の力で「成仏」できるのでしょうか?

 肉体的な「死」によって分けられてしまった、「生者」と「死者」は、もう二度とあうことはできないのでしょうか?

 お盆にならなければ家族の所に帰ってこられないのでしょうか?

 

 Part2 では浄土教における「成仏」の考え方をお話します。

◎今日の写真は極楽世界を描いた「当麻曼荼羅」です。

 

「形あるものは必ず壊れる」・・・淡路島の世界平和観音の廃墟 Part2

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 上の写真は前回のエントリーでお話した、淡路島の世界平和観音の横に建てられている五重塔です。だいぶ荒廃が進んでいますね。

  仏教では、「色」すなわち物質というものの根本的な性質が「壊れる」にあると見ています。それがどれほど立派であろうと、頑丈であろうと、やがて変化し壊れていくのです。

 日本には1000年以上の歴史を誇る建物がありますが、それもけして建立したときのままではありません。絶え間ない修理や補修を繰り返しているのです。

 「寺院が壊れる」という言葉から真っ先に浮かぶのは・・・慈雲寺の本堂の雨漏り・・・あ・・・ではなくて、かつて富士山を見渡す素晴らしいロケーションに建っていた巨大な寺院、大石寺正本堂です。

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 この建物は1972年、日蓮正宗の総本山大石寺の本堂として建てられたものです。350億以上の建設費のほとんどは、当時日蓮正宗の信徒組織だった創価学会の信者が寄進したものでした。

 しかし、日蓮正宗創価学会の関係が悪化し、ついに創価学会が破門されるという事態となりました。その結果、一度に6000人の人々が礼拝を行えるこの巨大な寺院は、日蓮正宗の手によって、50億もの巨費をかけて徹底的に破壊されました。

 私はこの破壊事件について、一般の創価学会員がどう感じていたのか?また、他の仏教宗派の人々は、この凄まじい怒りの発散をどうとらえていたのか?とても興味があります。この件に関して、良い資料となる本をご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひコメント欄でご教授下さい。

 

 どれほど巨大なものを造っても、どれほど大切にしても、劣化は免れることができないし、台風や地震など大自然の力は容赦がない。それ以上に人間の怒り、欲望といった煩悩によっても破壊されてしまう。 

 信仰を支えるのは巨大な建物ではないはずです。でも・・・・やっぱり慈雲寺の屋根は直さなくちゃなぁ・・・う~ん・・私は大仏さまが好きなので、巨大なものを全部否定したいのではないのですが・・・。中部地方には結構あちこちに大仏さまがおいでのようなので、涼しくなったら、東海大仏めぐりをしたいと思っています。

 

 バックアップ

「形あるものは必ず壊れる」・・・淡路島の世界平和観音の廃墟 Part1

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上の写真は、淡路島にある(あったと言うべきか?)世界平和観音です。100mもあるという巨大な観音像は、ビジネスホテルやオフィスビルなどを経営していた奥内豊吉という人が、1977年、個人で建立したものです。「観音」とは名付けられていますが、宗教法人だったわけではなく、「観光施設」というか、内部は奥内氏の個人コレクションの博物館のようなものだったようです。

 1988年に奥内氏が亡くなり、その意思を継いだ妻も亡くなると、遺族は観音さまの相続を放棄。2006年に施設は閉鎖されて、それ以来静かに崩壊し続けています。

 外壁のコンクリートが崩落するなど、周辺の住民からの不安を受け、今年から二年がかりに解体されることが決まりました。解体だけで5億以上かかるだろうと言われています。

 私は、二年前に淡路島の取材に行ったときに、この観音様のすぐ横を通り、あまりに驚いたので「ちょっと止まってください」という言葉も出ませんでした。以来、どうしても近くでゆっくり眺めてみたいと思ったのですが、最近、所用で淡路島に行くことになり、念願の観音様に出会いました。

 この観音様のスタイル、表情、なんともユニークです。これは誰の意匠なのでしょうか?豊吉さんのお好み?

 いったいどんな気持ちで「世界一巨大な」観音様を建てようと思ったのでしょうか?

 

 形あるものは必ず壊れるとお釈迦様は教えています。『阿含経』には「壊れる(変化する)ゆえに色と呼ばれる」と記されています。 (つづく)

                                  (つづく)

九月の慈雲寺の行事予定

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 9月になりました。今日は一日曇り空で、陽が落ちたら何となく涼し気な風が吹いてきました。台所にはエアコンがないので、料理も怠けがちだったのですが、今晩はちょっと張り切ってイタリアン・・・といっても、ちょっと凝ったパスタとサラダを作っただけですが・・・・

 

 さて、9月の行事です。

 

1)9月2日 夜7時半より 満月写経・写仏の会

 慈雲寺では、毎月満月の夜にお月見をかねた写経・写仏の会を行っています。7時半からご一緒に『般若心経』を読誦し、毎月少しずつ心経の内容についても学んでいきましょう。

 必要な道具は全てこちらでご用意いたしますので、手ぶらでお気軽にご参加ください。

☆8月30日の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」の時にお配りしたレジメの予告には「9月3日」になっていました。月齢カレンダーを読み間違えていました。申し訳ありません。3日の夜にも用意しておきますので、どちらの日でも、ご都合の良い日においでください。

2)「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」9月20日 10時より

 身近な話題から、仏教のものの見方、考え方の基礎をご一緒に学んでいきましょう。「講座」というタイトルはついていますが、どなたでもお気軽にご参加いただけます。

9月のテーマは、仏教の基礎である「八正道」についてお話します。お釈迦様は人々が生きる苦しみから離れ、穏やかに暮らす修行の道筋をお示しになりました。

 その基本的なアプローチの仕方をご一緒に学んでみましょう。

 

◎慈雲寺の行事は全て無料です。仏様やご先祖への御供養、お寺の維持などのために、お気持ちを御喜捨いただければ有難く存じます。

 

◎お彼岸の期間中の御供養の読経をご希望の方は、宗派にかかわらずご遠慮なくご相談くださいませ。

電話052-621-4045

 

◎今日の写真は、有馬温泉の源泉から流れ出るお湯の滝です。

今月の尼僧と学ぶやさしい仏教講座は予定通り行います

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 上の仏像は極端な苦行から離れ、静かに瞑想に入られているお釈迦様のお姿です。悟りを開かれる直前のお姿でしょうか・・・・

 今月の「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は、新聞の告知やお寺周辺にポスターを貼りだしたりするのもやめ、ひっそりと開催することにいたしました。

 「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」は8月30日10時より。テーマは「”諦める”とは何か?」。仏教の最も基本的な教えである「四諦」についてご一緒に考えてみましょう。

 

 椅子の間もできるだけ空け、本堂のガラス戸も開けるものは(古くなってレールがさび付き、開かないものもあります)全て開け放っておきますので、空気の入れ替えは問題ないと思います。

 しかし、慈雲寺の本堂には冷房がありません。大き目の扇風機はありますが、全ての方々に風を送れるというわけではありません。どうぞ、体調に十分ご留意なさっておでかけ下さい。

 本堂の入口に消毒ジェルを用意しておきますので、ご利用ください。

 また、冷たい麦茶やほうじ茶もご用意します。紙コップをお使いください。

 

 お話の後に、みなさんと茶話会をするのが楽しみなのですが、コロナの状況が落ち着くまで、あまり密にならないようにして、お茶を楽しみましょう。お菓子もご用意いたします。

 

菩提樹が慈雲寺に出現!

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 お釈迦様は菩提樹の下で静かに瞑想に入られ、ついに悟りを開いたと言われています。上の写真は、インドのブッダガヤにある大菩提寺菩提樹。お悟りを開かれた場所に建てられたお寺です。大きな菩提樹が境内に何本もあり、特にお釈迦様がお悟りを開いた、まさにその菩提樹の子孫(挿し木で受け継がれた三代目)が大きく枝を広げ、そこで瞑想する修行僧もいます。

 今週末の30日(日)には、「尼僧と学ぶやさしい仏教講座」で、お釈迦様の教えの基本である「四諦」について少しお話をしようと思っています。

 その準備をしていたら、大菩提寺にお参りした時のことを思い出し、「あの菩提樹が懐かしい。慈雲寺にも菩提樹を植えてみたいなぁ」と思っていました。

 そして、今朝、洗濯物を干そうとしてベランダへ出た時、倉庫の陰から枝が伸びているのに気が付きました。

 え????あれって菩提樹では??思わず洗濯物を放り出して倉庫に近づいてみると、3m以上ある立派な菩提樹でした。今年になって急に枝を広げたのでしょうか?今までは倉庫の陰でひっそり成長していたので気が付かなかった・・・・5年もここで暮らしているのに、境内の樹木に気が付かないなんで、どれだけ大きなお寺なんだ!?と笑ってしまいました。

 というわけで、認識していなければ「存在していない」幻の菩提樹が、とうとう出現したというわけです。残念ながら、どうやら今年の花の時期は逃してしまったようですが・・・。秋になれば黄葉するようですので、何だか楽しみ。

 それにしても不思議・・・

「慈雲寺文庫」に新しい本棚をご寄付いただきました

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 慈雲寺の門の内側には、小さな図書館「慈雲寺文庫」があります。持ち出し自由。読み終わったら返却して下さっても良いし、自分の本と交換して下さってもOK. 椅子もあるので、立ち読みも良いですし、本堂でお茶を飲みながら読書も歓迎です。

 本のご寄付は大歓迎とお話していたら、何人かの方が箱いっぱいの本を持ってきてくださいました。中には新品同様のものも!

 そして昨日、新しい大きな本棚を二つご寄付下さった方があります。「そろそろ終活をしているので、本の整理をしたい。こちらでもらってくれるなら有難いけど、本棚もいるだろうと思って持ってきた。」とニコニコしながらおっしゃいます。

 こんな大きな本棚を寄付して下さるといくことは・・・・本もどっさり来るのでしょうか?なんだか楽しみ。この大きさだと、倒れないように用心が必要かもしれません。

 こんな風に、慈雲寺の活動にご近所の方々が関心を持って下さることは、本当に嬉しいことです。深く感謝申し上げます。