このごろは圧倒的に少数派になってしまいましたが、私は電車の中で本を読むのが大好きです。揺れる車内で読むので、あまり細かい字だったり、難しい内容のものは向いていません。気持ちが楽しくなったり、ゆったりしたりする本がさらに良い。
と、いうわけで持って行く本を選ぶのも外出の楽しみの一つです。昨日は、解剖学者の養老孟司さんとイラストレーターの南伸坊さんの対談本『超老人の壁』を持って出ました。有名な絵画を題材にしたり、遺体の運び出し方に言及したり、お二人の対話のテーマはさまざまですが、どれも知的な遊び心いっぱいです。
その中で養老先生が老人の物忘れについて言及したのが目に留まりました。
「年寄は体力もないし、感情を動かすと疲れるでしょう?記憶は感情と結びついてるんで、感情が動かなくなれば、忘れることも増えます。」
電車の中なのに、思わず「おお!」と声が出てしまいました。単に記憶力が落ちてくるのではなく、関心がなくなると忘れる・・・当然といえば当然ですね。
喜怒哀楽の心が豊かで、美しいものを愛し、知的好奇心を元気に働かせていけば・・・関心がなければ忘れるって、ほんと。
しかし、リタイヤして、豊かな老後を生きている方は、学校や会社の時代のように、無理やり関心のないことまで記憶する必要はないわけですから、関心がないことを忘れても、別に気にしなくても良いのでは?
その代わり、美しいもの、優しい感情、穏やかな思いなどに関心を持ち、新しい情報と結び付けていけばよいのでは?例えば、本や新聞は知的刺激がいっぱい。「仕事に必要」とか「試験に出る」とかはもう考えなくても良いのですから、本当に自分の好きなことに集中して、たっぷり感情を動かして記憶していくことができるわけです。
おお、なんだか楽しくなってきました。
◎今日の写真はインドのタージマハールで見た大理石の象眼細工です。